歯科医院の償却資産申告、1月31日までに市町村へ

歯科医院の償却資産申告、1月31日までに市町村へ

年明けに市町村から「償却資産申告書」が届いて、去年の控えを見ながら何となく書いていませんか。ユニットもレントゲンも、確定申告で減価償却しているのに、市町村にも別に出す理由がよく分からない。そんな状態のまま1月31日を迎える院長に向けた記事です。

先に結論です。固定資産税の納税義務がある償却資産の所有者は、毎年1月1日現在の分を、1月31日までに、その資産がある市町村の長へ申告します(地方税法第383条)。償却資産とは、土地と建物を除いた、事業に使える資産のことです。10万円未満で一度に経費にしたものなどは外れますが、外れないものもあります。どこで線が引かれているかを、条文と市の案内で順に確かめます。

所得税の側の「何年で経費にするか」は歯科ユニットの耐用年数は7年、別表の読み方にまとめました。あちらは税務署に出す減価償却、こちらは市町村に出す固定資産税の申告を扱います。

目次

申告の決まりは地方税法第383条

地方税法第383条によると、申告をするのは、固定資産税の納税義務がある償却資産の所有者です。同じ条の括弧書きで、所有者のうち次の2つは除かれています。第389条第1項の規定で道府県知事若しくは総務大臣が評価すべき償却資産の所有者。第742条第1項若しくは第3項の規定で道府県知事が指定した償却資産の所有者です。

同じ第383条によると、申告の対象は毎年1月1日現在の償却資産です。書く事項は、所在・種類・数量・取得時期・取得価額・耐用年数・見積価額のほか、償却資産課税台帳に登録し、価格を決めるのに要る事項です。申告は総務省令の定めるところによって行います。期限は1月31日で、出す先はその償却資産の所在地の市町村長です。

地方税法第359条によると、固定資産税の賦課期日(だれに課税するかを決める基準の日)は、その年度の初日が属する年の1月1日です。第343条第1項は、固定資産税を固定資産の所有者に課するとしています。第342条第1項は、固定資産が所在する市町村が課すると定めています。

ここからは筆者の読み方です。基準は「1月1日に持っているか」なので、12月中に入れた機器は、すぐ次の1月の申告に載ります。1月2日に入れた機器は、その次の年の申告からです。また、確定申告をしていても、市町村への申告は別に要ります。広島市の案内も、確定申告は国税を計算するため、償却資産の申告は市税である固定資産税を計算するためのものだとして、税務署とは別に市へ申告が要るとしています。

1月は、源泉所得税の納期の特例を使っている医院なら1月20日の納付も重なります。そちらは源泉所得税の納期の特例、10人未満の歯科医院は年2回に書きました。

何が償却資産に入り、何が外れるか

地方税法第341条第4号は、償却資産を次のように定めています。土地と家屋は入りません。事業に使うことのできる資産で、その減価償却額又は減価償却費が、所得税法か法人税法の規定による所得の計算で、必要な経費(法人では損金)に入るものが対象です。鉱業権・漁業権・特許権をはじめとする、形の無い減価償却資産は除かれます。取得価額が少額のものをはじめ、政令で定める資産も外れます。一方で、法人税又は所得税を課されない者が持つ、これに類する資産は含まれます。ただし書きで除かれるのは、自動車税の課税の対象になる自動車と、軽自動車税の課税の対象になる原動機付自転車・軽自動車・小型特殊自動車・二輪の小型自動車です。

何が「政令で定める資産」かは、地方税法施行令第49条にあります。所得の計算で、取得価額の全部又は一部を、次の規定によって必要な経費(法人は損金)に入れている資産です。個人は所得税法施行令の第138条第1項若しくは第139条第1項。法人は法人税法施行令の第133条第1項若しくは第133条の2第1項です。ここでいう取得価額は、所得税法施行令第126条第1項各号若しくは第2項(法人は法人税法施行令第54条第1項各号)で計算した額をいいます。同条にはただし書きがあります。所得税法第67条の2第1項・法人税法第64条の2第1項のリース資産については、リース資産の所有者が取得したときの取得価額が20万円未満のものに限る、としています。

個人の医院に関わる2つの条も見ておきます。所得税法施行令第138条第1項は、不動産所得・事業所得・山林所得・雑所得のどれかを生む業務に使い始めた減価償却資産についての規定です。取得価額が10万円未満のもの、又は使用可能期間が1年未満のものは、その年分の必要経費に取得価額を全額入れます。10万円未満の側からは、主要な業務として行うものを除いた貸付けに使ったものが外れます。同令第120条第1項第6号・第120条の2第1項第6号に掲げるもの(リース資産)は、はじめから対象外です。

同令第139条第1項は、取得価額が20万円未満の減価償却資産の、全部又は特定の一部をひとまとめにする方法の規定です(一括償却資産)。この方法を選ぶと、使い始めた年から3年間、合計額を3で割った額ずつを必要経費にします。上のリース資産、第138条第1項を使ったもの、主要な業務でない貸付けに使ったものは対象外です。同条第2項により、使い始めた年分の確定申告書に一括償却対象額を書いた書類を付け、計算の書類を保存している場合に限って使えます。

広島市の案内(少額の資産)は、申告が要るかどうかを次の5つに分けています。要らない3つの根拠には、地方税法第341条第4号と施行令第49条を挙げています。

  • 要らない:10万円未満、又は使える期間が1年未満のもので、税務の上で一度に経費(法人は損金)にしたもの
  • 要らない:20万円未満のもので、税務の上で3年の一括償却にしたもの
  • 要らない:平成20年4月1日以降に結んだリース契約のリース資産(所得税法・法人税法に規定するもの)で、取得価額が20万円未満のもの
  • 要る:中小企業者等の少額資産の特例(租税特別措置法第28条の2、第67条の5)を、税務の上で使ったもの
  • 要る:20万円未満、又は使える期間が1年未満のものでも、税務の上で1つずつ減価償却しているもの

この特例の金額と期間は、令和8年の改正で変わっています。広島市のページの表と注記は、この記事を直した時点で、取得価額30万円未満・令和8年3月31日までの取得という改正前の線のままでした。いまの租税特別措置法第28条の2第1項(個人の中小事業者)によると、対象は、平成18年4月1日から令和11年3月31日までの間に取得するなどして業務に使った、取得価額が40万円未満の減価償却資産です。取得価額が10万円未満のものは外れ、その年分の合計は300万円までです。法人の中小企業者等についての第67条の5第1項も、令和11年3月31日まで・40万円未満としています。改正した法律の附則(第35条・第65条)によると、新しい線が当たるのは施行日以後に取得したものからで、施行日前に取得したものは従前の例によります。その施行日は、同じ附則の第1条で令和8年4月1日です。

広島市は別の案内で、耐用年数が過ぎた資産についても答えています。耐用年数が過ぎていても、減価償却が済んでいても、事業に使える状態なら申告の対象、という扱いです。

ここからは筆者の読み方です。歯科医院で迷いやすいのは、特例で一度に経費にした機器です。確定申告の上では「もう経費にしたもの」でも、地方税法施行令第49条が挙げる規定には租税特別措置法が入っていないので、償却資産として残ります。特例の金額の線と期間は改正で動くことがあるので、所得税の側の線は歯科ユニットの耐用年数は7年、別表の読み方で確かめてください。もう一つは、古いユニットや滅菌器です。帳簿上の価値がほぼ無くなっていても、診療に使える状態で置いてあれば対象です。

テナントで開業している医院の内装

地方税法第343条第10項は、家屋の所有者以外の者が、自分の事業に使うために取り付けた家屋の附帯設備を扱います(附帯設備には、家屋のうち附帯設備に当たる部分や、総務省令で定めるものも含みます)。対象は、そうして取り付けられ、かつ、家屋と一体になった(付合した)ことで家屋の所有者のものになった設備で、条文はこれを「特定附帯設備」と呼びます。市町村は、それが取り付けた者の事業に使える資産である場合に限り、取り付けた者を所有者とみなし、家屋に当たる部分も家屋以外の資産とみなして、固定資産税を課することができます。

この「課することができる」を市の条例でどう定めているかは、市町村ごとに確かめる部分です。広島市の案内では、借りた店舗や事務所に、借りた側(賃借人)が自分の事業のために内装・外装・電気・給排水・空調などの設備を付けた場合、それは償却資産に当たり、賃借人が申告する、としています。根拠には、法第343条第10項と市の条例を挙げています。

150万円の免税点と、申告しなかったとき

地方税法第351条によると、同じ人がその市町村の中に持つ償却資産について、固定資産税の課税標準となるべき額が150万円に満たないときは、市町村は固定資産税を課することができません(土地は30万円、家屋は20万円)。ただし、財政上その他特別の必要がある場合には、市町村の条例の定めるところにより、150万円に満たないときでも課することができます。

第349条の2によると、償却資産の課税標準は、賦課期日における価格で償却資産課税台帳に登録されたものです。第341条第5号は、価格を「適正な時価」としています。第350条第1項によると、標準税率は100分の1.4です。第362条第1項は、納期を4月、7月、12月及び2月中で市町村の条例で定めるとし、但し書きで、特別の事情がある場合は異なる納期を定められるとしています。

ここからは筆者の読み方です。150万円は、買ったときの値段の合計ではありません。台帳に登録された価格で見る線です。自分の医院が150万円に届くかどうかを手元で決めて、申告そのものを出さなくてよいかどうかは、所在地の市町村の案内で確かめてください。

地方税法第386条によると、固定資産の所有者が第383条若しくは第384条の規定で(又は現所有者が第384条の3の規定で)申告すべき事項について、正当な事由がなくて申告をしなかった場合、市町村は条例で10万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができます。第385条第1項によると、第383条から第384条の3までの規定で申告すべき事項について虚偽の申告をしたときは、違反行為をした者は1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処されます。

地方税法第17条の5第5項によると、固定資産税などの賦課決定は、前2項の規定にかかわらず、法定納期限の翌日から数えて5年を経過した日以後にはできません。広島市の案内は、申告漏れが分かると、その資産が課税対象になる年度までさかのぼって税額を直し、その期間は同項により最長5年まで、としています。

今日からできること

ここからは、出典の手順ではなく筆者の提案です。申告書が届く前の、手が空いた日にできることを並べます。

  • 確定申告で使っている減価償却の明細を手元に置く。取得時期・取得価額・耐用年数は、申告書に書く事項と重なります。
  • 去年の申告書の控えと突き合わせる。この1年で増えた機器と、捨てた・売った機器に分けて書き出します。
  • 経費の付け方の印を付ける。一度に経費にしたもの・3年で一括にしたもの・特例で一度に経費にしたもの・個別に減価償却しているもの。どれに当たるかが分からない機器は、顧問の税理士に聞きます。
  • テナントなら工事の請求書を探す。開業時や改装時の内装・電気・給排水・空調の工事が、医院の負担で行われていないかを見ます。
  • リースの機器は契約書を見る。所有者がだれか、申告をどちらがするかを、リース会社に確かめておきます。

それでも残る面倒

  • 1年分の購入の記録が散らばる。請求書・納品書・領収書が別々の場所にあると、1月に「この1年で何を入れたか」を集め直すことになります。
  • 同じ機器を2か所で扱う。税務署向けの減価償却と、市町村向けの申告で、扱いの線が違います。同じ機器でも、片方では外れ、片方では残ることがあります。
  • 市町村ごとの違い。様式・出し方・免税点まわりの扱いは、所在地の市町村の案内に従います。分院が別の市町村にあれば、そこにも別に申告することになります(第342条第1項・第383条からの筆者の読み方)。

まとめ

  • 固定資産税の納税義務がある償却資産の所有者は、毎年1月1日現在の分を、1月31日までに所在地の市町村長へ申告する(地方税法第383条)
  • 10万円未満又は使用可能期間1年未満で一度に経費にしたもの、20万円未満で3年の一括償却にしたものは外れる(地方税法施行令第49条)
  • 租税特別措置法の特例を使ったもの、耐用年数を過ぎても事業に使える状態のものは、広島市の案内では申告の対象
  • 課税標準となるべき額が150万円に満たないときは課税できない。ただし条例で課することができる場合がある(第351条)
  • 正当な事由がなく申告しなかった場合、市町村は条例で10万円以下の過料の規定を設けることができる(第386条)

この記事で当たった条文と市の案内

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この記事を書いた人

近藤 宏海
近藤 宏海 株式会社ガラパゴスワークス 代表取締役

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私は歯科医院の事務の現場で、医院の開業から日々の運営まで、発注・納品・人の手続き・お金の管理を担ってきました。いまは歯科医院の開業コンサル・経営コンサルとして、ほかの医院の立ち上げや立て直しにも関わっています。

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