歯科材料の発注、Excelとファックスをやめるには

歯科材料の発注、Excelとファックスをやめるには

発注書はファックス、在庫はExcel。どちらも動いてはいるけれど、更新するのはいつも同じ人。その人が休むと止まる ── そういう相談を受けます。

結論から言うと、いきなりシステムを入れる必要はありません。先に決めるのは「誰が」「何を」「いくらまで」発注してよいかの3つです。ここが決まっていない医院にツールを入れると、ファックスがメールに変わるだけで、確認の手間はむしろ増えます。

この記事では、道具を買わずに今日からできる整理と、それでも紙とExcelでは残ってしまう面倒を分けて書きます。

目次

なぜファックスとExcelが残るのか

やめられないのには理由があります。悪い習慣だからではなく、その形でないと困ることがあるからです。

  • ファックスは控えが手元に残る。送った証拠が紙で残るので、「言った・言わない」になりにくい。
  • 取引先ごとに注文の窓口が違う。A社は営業担当にLINE、B社はWeb発注、C社はファックス。そろえられないので、いちばん確実な方法に寄せている。
  • Excelは自由に書ける。項目を足すのも消すのも自由。ただし同時に開けないので、更新できる人が ひとり に固定されがちです。

つまり問題は「紙かデータか」ではありません。決めごとが人の頭の中にあることです。順番としては、決めごとを先に外に出します。

道具を買わずに、まず決める3つ

道具を入れる前に決めておくこと

1
誰が頼むか

発注してよい人を決める。
窓口を絞るほど二重発注は起きにくい

2
いくらから確認するか

金額の線を1本 引く。
それ以下は任せる

3
どこに記録するか

置き場を1つに決める。
紙でも構いません

🔵 この3つが決まっていないと、どんな道具を入れても同じことが起きます。

1. 発注してよい人と、金額の線引き

金額の線は医院で決めます。たとえば「◯万円までは衛生士チーフの判断でよい。それ以上は院長に見せる」。これを紙に1行 書いて、スタッフルームに貼っておきます。線引きがないと、迷った人は「とりあえず頼んでおく」か「院長に聞かないと」で止まるかのどちらかになります。

2. 定番品のリスト(買うものを固定する)

毎月 決まって買っているものを、金額の大きい順に並べて、上から20品目だけリストにします。メーカー名・品番・入数・仕入先を書きます。ここに入っていないものを買うときだけ相談する、という形にすると、相談の回数が一気に減ります。

3. 発注の締め時刻

「毎週火曜の昼まで」と決めると、思い出したときに個別に頼むことがなくなります。まとめて出せば送料もロットも整理しやすくなります。

ファックスをやめると出てくる話 ── 電子帳簿保存法

発注をメールやWebに移すと、避けて通れない話があります。メールやWebでやりとりした注文書・納品書・請求書は、令和6年1月から、電子データのまま保存する必要があります(電子取引データの保存)。紙に印刷してファイルするだけでは足りず、印刷したあとに元のデータを消すことはできません。

国税庁のパンフレットでは、満たすべき要件が2つに整理されています。

  • 可視性の確保 … ①モニター・操作説明書等の備付け ②検索要件の充足(②で何を求められるかは、国税庁の電子帳簿等保存制度特設サイトで確認してください)
  • 真実性の確保 … 不当な訂正削除の防止に関する事務処理規程を定めて守る(専用システムがなくてもよい)

②の検索要件には、外れる道が2つ示されています。1つは、2課税年度前の売上高が5,000万円以下であること。もう1つは、プリントアウトした書面が日付および取引先ごとに整理されていることです。どちらか一方に当てはまり、そのうえで「ダウンロードの求め」に応じられるようにしていれば、②は要らなくなります。

準備が間に合わない場合の猶予措置もありますが、こちらは2つを両方 満たすことが条件です。⑴ ルールどおりに保存できなかったことに、所轄の税務署長が相当の理由を認めること(申請などは要りません)。⑵ 税務調査などの場で、データそのものを渡す求めと、それを印刷した書面を出す求めの両方に応じられるようにしておくこと。理由のほうは「人手が足りない」「システムの整備が間に合わない」「資金が足りない」など幅広く認められるとされていますが、⑵ を欠いたまま元データを消してよい、という話ではありません。

出典:国税庁「令和6年1月からの電子取引データの保存方法」(令和5年12月)/同「電子帳簿等保存制度特設サイト」

ファックスを完全にやめると、控えの紙がなくなる代わりに、この保存の話が新しく発生します。ここを知らずに移行すると、翌年の税務の場面で困ります。先に保存の置き場所を決めてから、注文の方法を変えるのが順番です。

在庫は「全部数える」をやめる

在庫管理が続かなくなるのは、全部の品目を数えようとするからです。棚卸しの日が半日つぶれると、翌月にはやらなくなります。

数えるのは、さきほどの「定番品リストの上位20品目」だけで十分です。金額の大きい順に並べたリストなので、そこを押さえれば金額の大きい部分は押さえられます。やることは3つ。

  1. 棚に定位置を作る。置き場所が固定されていないと、数えるより探す時間のほうが長くなります。
  2. 発注点を決める。「残り2箱になったら発注」と棚に書く。数えなくても、見れば分かる状態にします。
  3. 数えるのは月1回、上位20品目だけ。10分で終わります。

なお、歯科用貴金属のように価格が定期的に見直されるものは、まとめ買いの判断が在庫管理と直結します。保険診療で使う歯科用貴金属の告示価格は、診療報酬改定時以外に3月・6月・9月・12月に見直されています(中央社会保険医療協議会 総-3「歯科用貴金属価格の随時改定について」/令和7年10月17日)。この動きはディーラーごとの価格差の記事でくわしく扱います。

それでも残る面倒

ここまでは紙とExcelでもできます。ただ、次の3つは手作業だと最後まで残ります。

  • 「誰がいつ承認したか」の記録。口頭で承認すると、あとから追えません。金額の大きい発注ほど、記録がないと困ります。
  • 発注 → 納品 → 請求のつき合わせ。届いていない品目の請求に気づけるのは、3つを並べたときだけです。
  • 費目ごとの集計。材料費が今月いくらかかったかを、月末を待たずに知ること。Excelを手で集計している限り、月末以降にしか分かりません。

まとめ

  • 先に決めるのは道具ではなく、発注してよい人・金額の線引き・定番品リスト・締め時刻。
  • 在庫は全部数えない。金額上位20品目だけ、発注点を棚に書く。
  • ファックスをやめてメール・Webに移すなら、電子取引データの保存(令和6年1月〜)を先に確認する。
  • 承認の記録、発注と納品と請求のつき合わせ、費目ごとの集計は、手作業だと最後まで残る。

事務長AIなら、ここが変わります

発注依頼から稟議、発注書、受入、在庫までを1つの流れでつなぎます。稟議のしきい値は医院ごと・費目ごとに設定できるので、「ここまではチーフ、それ以上は院長」といった線引きを、医院が決めた金額のまま画面に載せられます。商品マスタと仕入先マスタを持つので、定番品リストの置き場所にもなります。権限で金額を隠せるため、スタッフに仕入単価を見せずに発注を回すこともできます。

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この記事を書いた人

近藤 宏海
近藤 宏海 株式会社ガラパゴスワークス 代表取締役

院長、その事務、ひとりで抱えていませんか。

私は歯科医院の事務の現場で、医院の開業から日々の運営まで、発注・納品・人の手続き・お金の管理を担ってきました。いまは歯科医院の開業コンサル・経営コンサルとして、ほかの医院の立ち上げや立て直しにも関わっています。

現場で「これがあれば」と感じたものを、自分の手で形にしたのが「事務長AI」です。いまも導入先の医院で使っていただきながら、改良を続けています。

記事では、現場で実際にぶつかった困りごとを、公的な資料で裏付けながら、明日から使える形でお伝えします。

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