歯科技工指示書、10月から技工所番号の記載が必要に

歯科技工指示書、10月から技工所番号の記載が必要に

技工物を外の技工所に出している医院の指示書。いま使っている用紙に、何の欄があるか思い出せますか。その技工所が、保健所に開設の届出を出しているかどうか、確かめたことはありますか。

先に結論です。令和8年10月1日から、技工所で行う歯科技工の指示書には「歯科技工所番号」を書くことになりました。対象は10月1日以後に発行する指示書です。番号は、開設の届出をした技工所に都道府県や保健所設置市・特別区が通知するものです。番号は「都道府県2桁-保健所2桁-通し番号5桁」の形です。院内で使う指示書の用紙を見直し、外注先ごとに番号を控えておくのが、医院の側でやることになります。

指示書を何年置くかは歯科医院のカルテ保存期間は5年 ── 帳簿は何年かで整理しました。この記事は、指示書に何を書くかのほうの話です。

目次

何が変わったのか ── 令和8年10月1日から

もとになっているのは、令和8年厚生労働省令第63号です。歯科技工士法施行規則を一部改める省令で、公布は令和8年3月31日でした。中身は、厚生労働省医政局長の通知(令和8年5月20日 医政発0520第15号)が3つに分けて説明しています。

  • 開設の届出を受けた都道府県知事等は、開設者に歯科技工所番号を知らせる
  • 技工を歯科技工所で行う場合、歯科医師が書く指示書の記載事項に、その技工所の番号が加わる
  • 歯科技工士が出す業務従事者届(様式第3号)では、勤め先の欄で「歯科技工所」を選んだ人が、その番号も書く

通知によると、施行期日は令和8年10月1日です。

番号の形は、そのあと歯科保健課長の通知(令和8年9月4日 医政歯発0904第1号)で示されました。すでにある技工所にも付けます。形は次のとおりです。

  • 都道府県番号(2桁):JIS規格の都道府県コード
  • 保健所符号(2桁):番号を付けるときに、その技工所を所管している保健所の符号
  • 保健所ごとの通し番号(5桁):都道府県知事等が付ける

同じ通知は、この対応を10月1日までに行うよう、都道府県等に求めていました。

指示書に書くこと ── 施行規則第12条

歯科技工士法第18条によると、業として歯科技工をするには、歯科医師の指示書が要ります。この決まりは歯科医師又は歯科技工士に掛かり、指示書には厚生労働省令で定める事項を書きます。ただし書きもあります。技工をする場所が病院又は診療所の中で、かつ、その患者の治療を担当している歯科医師が直接指示して行うのであれば、この限りではありません。

その「厚生労働省令で定める事項」を並べているのが、歯科技工士法施行規則の第12条です。10月1日に施行された改正後の条文では、次の7つです。

  1. 患者の氏名
  2. 設計
  3. 作成の方法
  4. 使用材料
  5. 発行の年月日
  6. 発行した歯科医師の氏名と、その歯科医師が勤める病院又は診療所の所在地
  7. その指示書による歯科技工を歯科技工所で行うときは、その技工所の名称、所在地と歯科技工所番号

番号が加わったのは7つ目です。改正前の7つ目は、技工所の名称と所在地だけでした。番号は、施行規則第13条第3項で、開設の届出を受けた都道府県知事等が開設者に通知するものと定められました。改正の附則によると、番号の記載が要るのは10月1日以後に発行する指示書で、それより前に発行した指示書は、改正前の決まりのままです。

ここからは筆者の読み方です。番号が要るのは「技工所で行うとき」なので、院内で院長や勤務の歯科技工士が作るものは、この欄の話ではありません。また第18条のただし書きにあたる院内の技工は、そもそも指示書の話から外れます。番号の欄を足すのは、外の技工所に出すときの用紙です。

なぜ番号ができたのか ── 届出の無い技工所

歯科技工士法第21条第1項によると、歯科技工所を開いた人には届出の義務があります。期限は開設後10日以内です。出す先は、技工所がある場所の都道府県知事(保健所を設置する市や特別区の区域では、市長や区長)です。届け出るのは、開設の場所と管理者の氏名のほか、厚生労働省令で定める事項です。

医政発0520第15号は、改正の背景として、開設の届出が出ていない技工所があると報告されていたことを挙げています。この問題を議論してきたのが「歯科技工士の業務の在り方等に関する検討会」で、令和7年8月6日の第5回で見直しの方向性が了承されました。方向性は2つです。都道府県等が届出済みの技工所を確実につかめるよう、番号を付けること。そして、届出済みの技工所かどうかを歯科医師の側で確かめられるよう、指示書の記載事項を検討することです。

同じ通知は罰則にも触れています。第21条第1項・第2項に違反したときは、法第32条により30万円以下の罰金です。

ここからは筆者の読み方です。届出の義務と罰金を負うのは、技工所を開設した側です。ただ、番号を指示書に書く欄ができたことで、番号を確かめられない技工所には、指示書を書き切れないことになります。発注先を選ぶときの目安として、医院の側にも関わってくる改正です。

今日からできること

1. 外注先の技工所を書き出す

まず、いま技工物を出している技工所を全部書き出します。名称と所在地は、もともと指示書に書く事項なので、控えが指示書の中にあります。

2. 番号を確かめる

番号は、技工所の開設者に通知されます。ここからは筆者の読み方ですが、まず取引のある技工所に聞くのが早いと思います。

自治体が公開している技工所の一覧で確かめられるところもあります。久留米市は、番号を市内の技工所一覧(PDF)に載せ、依頼先の番号を確かめるよう呼びかけています。令和8年10月1日以後に出す指示書から要る、という案内です。岡山県は、各保健所からの番号の通知を9月下旬ごろに行う予定だと案内していました。県の技工所一覧(令和8年10月5日更新)には、番号の列が入っています。ただし一覧には岡山市・倉敷市の区域は入っていません。

ここからは筆者の読み方です。一覧を出しているかどうか、どこまで載っているかは自治体ごとに違います。自分の地域の一覧が見つからなければ、技工所に聞くのが確実です。技工所の側でも番号が分からないときは、その技工所を所管する保健所に聞くことになります。

3. 指示書の用紙に欄を足す

技工所が用意した用紙を使っているなら、10月からの用紙に番号の欄があるかを見ます。医院で作った用紙なら、技工所の名称・所在地の横に番号の欄を足します。

ここからは筆者の読み方です。桁の多い番号を毎回手で書くと、写し間違いが起きます。外注先ごとに番号を入れた用紙を分けておくか、印字しておくと、毎回書く手間も間違いも減らせます。指示書を出すのは歯科医師ですが、番号の控えを揃える・用紙を差し替えるといった準備は、事務のスタッフに任せられる部分です。任せ方の決め方は事務スタッフを雇う前に決めておく「任せる範囲」の作り方に書きました。

それでも残る面倒

番号の欄を足しても、外注先が増えたり変わったりするたびに、控えを直す必要があります。技工所が移転して所管の保健所が変わったときの番号の扱いは、今回読んだ2つの通知には出てきません。変更があったときは、技工所か保健所に確かめてください。

また、指示書の保存の年数は、今回の施行規則の改正では変わっていません。歯科技工士法第19条は、技工を行った施設の管理者に、技工が終わった日から2年の保存を求めています。医院に残す控えの年数は、冒頭に挙げたカルテの保存期間の記事にまとめてあります。

まとめ

  • 令和8年10月1日から、技工を歯科技工所で行うときの指示書には、その技工所の歯科技工所番号を書く(令和8年厚生労働省令第63号・医政発0520第15号)
  • 番号の形は、都道府県2桁-保健所2桁-通し番号5桁。開設者に通知される(医政歯発0904第1号)
  • 施行規則第12条が挙げる記載事項は7項目。技工所で行うときの7つ目に、番号が加わった。10月1日以後に発行する指示書から
  • 番号は技工所に聞く。自治体の技工所一覧で確かめられるところもある
  • 指示書の用紙に欄を足し、外注先ごとに番号を控えておく

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この記事を書いた人

近藤 宏海
近藤 宏海 株式会社ガラパゴスワークス 代表取締役

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私は歯科医院の事務の現場で、医院の開業から日々の運営まで、発注・納品・人の手続き・お金の管理を担ってきました。いまは歯科医院の開業コンサル・経営コンサルとして、ほかの医院の立ち上げや立て直しにも関わっています。

現場で「これがあれば」と感じたものを、自分の手で形にしたのが「事務長AI」です。いまも導入先の医院で使っていただきながら、改良を続けています。

記事では、現場で実際にぶつかった困りごとを、公的な資料で裏付けながら、明日から使える形でお伝えします。

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