施設基準は「届け出れば算定される」ものではありません。届出は厚生局への手続き、算定はレセコンの設定と日々の入力です。この2つは別々に動くので、片方だけ済んで止まることがあります。令和8年度の診療報酬改定から数か月が経ちました。6月に出した届出が、実際にレセプトに乗っているかを確かめるには、ちょうどいい時期です。この記事では、お金をかけずに確認する手順を書きます。
なぜ「届けたのに算定していない」が起きるのか
責任感のある医院ほど起きます。理由は単純で、関わる人が分かれているからです。
- 届出の書類を作ったのは、院長かベテランの受付
- レセコンの設定をするのは、業者かレセコン担当
- 実際に入力するのは、その日にチェアについたスタッフ
届出を出した人は「出した」で仕事が終わります。入力する人は、新しい項目が増えたことを知らないままです。改定の直後は届出が集中するので、この隙間が大きくなります。
そしてもう1つ。算定していなくても、誰からも連絡は来ません。返戻や査定と違って、取りこぼしは何の音もしないまま過ぎていきます。自分で見に行かないと分かりません。
自院が何を届け出ているかは、無料で確認できる
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。各地方厚生局は「届出受理医療機関名簿」を公開しています。どの医療機関が、どの施設基準を届け出て受理されているかの一覧です。
たとえば九州厚生局のページでは、医科・歯科・薬局の名簿が管轄ごとに載っています。歯科の名簿はPDFのほか、エクセルデータ(ZIP)でも配られています。更新は毎月10日頃の予定と書かれています。
出典:九州厚生局「届出受理医療機関名簿(全体版)」(他の厚生局にも同じ名簿があります。自院の管轄をご覧ください)
エクセルで開いて自院の名前を検索すれば、いま国に届け出ていることになっている項目が、そのまま並びます。記憶やファイルの控えではなく、受理された側の記録です。ここから始めるのが確実です。
突き合わせるのは3枚
「届けたのに算定していない」を見つける流れ
厚生局の名簿。
自院が何を届けたか
レセコンの処置別集計。
実際に何を算定したか
①にあって②に無いもの。
それが取りこぼし
毎年8月1日現在。
年1回の見直しの機会に
🔵 ①は無料で誰でも見られます。特別な道具は要りません。
用意するのは次の3つです。かかる時間は、届出の数とレセコンの集計の出しやすさによって、医院ごとに違います。
| 何を見るか | 分かること | |
|---|---|---|
| ① | 厚生局の届出受理医療機関名簿 | 国に届け出ていることになっている項目 |
| ② | レセコンの設定画面 | 算定できる状態になっているか |
| ③ | 先月のレセプト(算定件数) | 実際に算定されたか |
見るべきは、ズレている行だけです。
- ①にあって②にない=レセコンの設定が入っていない。まずレセコンの業者に確認してください
- ①②にあって③が0件=設定はできているのに、現場で入力されていない。または算定できる患者さんが実際にいない。ここを確かめる
- ②にあって①にない=いちばん危ない側。届出がないまま算定していないか確認する
毎年の「定例報告」を、点検の日にする
施設基準を届け出た医療機関は、毎年、現況を厚生局に報告することになっています。この定例報告は、書類仕事として片付けるより、年に1回の棚卸しとして使うほうが得です。
たとえば関東信越厚生局の歯科では、令和8年8月1日現在の状況を、令和8年8月31日までに報告する扱いになっています。自己点検の結果、要件を満たさず辞退する施設基準がある場合は、辞退届の提出が必要とされています。
出典:関東信越厚生局「歯科診療所に係る定例報告等について」
注意:基準日は全国一律です。国の通知(令和8年7月1日付け 保医発0701第2号「施設基準の届出状況等の報告について」)で定められています。診療報酬改定が6月施行になったことに伴い、令和6年から基準日は8月1日です(それ以前は7月1日でした)。提出期限は厚生局ごとに案内が出ますので、自院の管轄をご確認ください。
「算定していない」には2種類ある
ここを分けずに進めると、危ない方向に行きます。
- 取りこぼし。要件は満たしているのに、入力していないだけ。これは直せばそのまま改善します
- 要件が崩れている。研修を受ける人が辞めた、体制が変わった、院内掲示が古いまま。この状態で算定を「戻す」と、後から返還を求められる可能性があります
算定件数が0だったとき、まず疑うのは1ではなく2です。要件を満たしていることを確かめてから、算定に戻す。順番を逆にしないでください。判断に迷ったら、管轄の厚生局や審査支払機関に確認するのが確実です。この記事は一般的な考え方の整理であり、個別の算定可否をお約束するものではありません。
今日からできること
- 厚生局の名簿で自院を検索し、届出項目を紙に書き出す(15分)
- その紙に、先月の算定件数を手書きで書き足す
- 0件の行に丸をつける。丸がついた行だけを、要件から確認する
- 研修の修了証・院内掲示の写真を、期限の日付とセットで1か所に置く
- 次の定例報告の月を、カレンダーに入れる
それでも残る面倒
- 研修の有効期限が、人ごと・項目ごとにバラバラに走っている
- 届出の控えが、紙のファイルとパソコンの両方にあり、どちらが最新か分からない
- 分院があると、医院ごとに届出項目が違う
- 担当していた人が辞めると、何を届け出たかが院内から消える
まとめ
- 届出と算定は別。届けても、レセコンの設定と現場の入力が揃わないと算定されない
- 取りこぼしは誰も知らせてくれない。自分で見に行くしかない
- 自院の届出項目は、厚生局の「届出受理医療機関名簿」で無料で確認できる
- 名簿・レセコンの設定・先月の算定件数、この3枚を突き合わせる
- 0件だった項目は、算定に戻す前に要件の確認から。順番を逆にしない
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届出の控えや院内掲示はマニュアルに、研修の受講記録は研修に残せます。期限が近いものはタスクとお知らせで拾えるので、担当者が辞めても院内から消えません。分院がある法人では、医院ごとに分けて持てます。なお、レセコンとは直結しておらず、算定件数はCSVで取り込む形です。

