歯科医院の明細書発行、正当な理由と届出

歯科医院の明細書発行、正当な理由と届出

会計のたびに出す紙が2枚あります。領収証と、明細書。この2枚は、義務の重さが違います。

先に結論を3つ。①領収証は、費用の区分が分かる形にして、無償で交付しなければなりません。②明細書のほうは、厚生労働大臣が定めた保険医療機関に、無償での交付が求められます。③ただし診療所には例外の道があり、その道を通るには院内の掲示と、地方厚生局長への届出が要ります。

そして③の例外は、いつまでも続く前提では作られていません。令和8年3月5日付けの通知と、療養担当規則の条文に当たって、順に見ていきます。

目次

条文は2つの紙を、別々に書いている

根拠は、療養担当規則(正式には保険医療機関及び保険医療養担当規則)の第5条の2です(e-Gov法令検索 保険医療機関及び保険医療養担当規則(療担規則))。3つの項に分かれています。

  • 第1項 ── 領収証。患者さんからお金を受け取る場面では、費用の区分が分かるように書いた領収証を、無償で交付しなければなりません。正当な理由があるときは、この限りではありません。ここはすべての保険医療機関が対象です。
  • 第2項 ── 明細書。厚生労働大臣の定める保険医療機関が、領収証を渡すときに、費用を計算したもとの項目ごとに書いた紙を交付します。こちらにも、正当な理由があるときの除外が付いています。
  • 第3項 ── その交付は、無償で行わなければならない。本文だけを読むと、お金を取る余地はありません。

読み分けるところは、第2項の主語です。領収証のほうが「保険医療機関」なのに対し、明細書は「厚生労働大臣の定める保険医療機関」になっています。つまり、どこが対象かは条文の外で決まります。

続く第5条の2の2は、第5条の2第2項の保険医療機関が公費負担医療(厚生労働大臣の定めるものに限られます)を担当した場合の明細書について定めています。こちらも無償です。窓口でお金を受け取らない場面でも、明細書の話は消えません。

そして、この条文には附則が付いています。病院を除く保険医療機関について、明細書を常に交付するのが困難な正当な理由があるときは当分の間、患者から求められたときの交付で足りるとし、無償での交付が困難な正当な理由があるときは当分の間、有償での交付ができるとしています。あとで出てくる診療所の例外は、この附則が土台です。第3項の「無償で行わなければならない」だけを読むと、料金の話とつながりません。

令和8年6月1日から、通知が入れ替わった

「厚生労働大臣の定める保険医療機関」の中身と、実務の細かい扱いは、厚生労働省保険局長の通知で示されています。いま生きているのは、令和8年3月5日付けの保発0305第18号です(厚生労働省 保発0305第18号(令和8年3月5日))。

令和8年の診療報酬の改定に合わせて出たもので、令和8年6月1日からの施行に合わせた中身です。それまで使われていた令和6年3月5日付けの保発0305第11号は、令和8年5月31日をもって廃止されました。手元に古い通知を印刷して綴じている医院は、差し替える対象です。

歯科にとって具体的なのは、領収証の作り方です。歯科診療報酬なら点数表の各部が単位で、そこまで金額の内訳が割れているものとされ、別紙様式2が標準に挙がっています。レセコンから出てくる用紙が、部ごとの内訳になっているかどうか。そこが見るところです。

明細書を毎回 出さなくてよい「正当な理由」

通知は、レセプトの電子請求が義務づけられた保険医療機関について、領収証を渡すときは明細書を無償で交付しなければならない、と書いています。そのうえで、かっこ書きで正当な理由を持つ診療所を除くと置いています(同通知 記の3・4)。

その正当な理由として通知が挙げているのは、次の2つです。

  • 明細書を出す機能が付いていないレセプトコンピュータを使っている場合
  • 自動入金機を使っていて、そこから明細書を出そうとすると改修が要る場合

どちらも、機械の側の事情です。忙しいから、枚数が多いから、といった理由はここに入っていません。

そして、当てはまる診療所が何もしなくてよいわけではありません。通知は、当てはまる場合にやることを並べています。

  1. 患者さんに求められたら、明細書を渡します。断ってよい、という意味ではありません。
  2. 正当な理由に当たること、希望する人には出すことを、院内の掲示などではっきり示す。掲示に入れるのは、手続き、お金を取るかどうか、取るならその額、1,000円を上回るならその額にした根拠、そして機械をいつ直すかです。
  3. 別紙の様式で、地方厚生局長へ届け出る。
  4. 毎年8月1日現在の状況を報告する。届け出た内容について、年に一度の報告が求められています。

4つめは、8月1日を基準日とする報告です。提出の期限までは通知に書かれていませんが、年に一度のものなので、届出を出したきりになっていないかを一度 確かめる価値があります。

この例外は、廃止の予定が書かれている

通知の終わりのほうに、短い一文が置かれています。この正当な理由は、令和10年以降に標準型のレセプトコンピュータが配られるようになる時期をめどに、廃止する予定だという趣旨です。

いつ廃止されるかは、この一文からは日付として読み取れません。ただ、いまの例外を前提にレセコンを使い続ける計画は、どこかで組み直すことになります。レセコンの入れ替えを考えている医院は、この一文を判断材料の1つに入れてよいところです。レセプトまわりの運用はレセプトの返戻が減らない医院に共通することでも触れています。

窓口でお金を受け取らない患者にも

窓口でお金を受け取らない場面にも、明細書の話は及びます。通知は、公費負担医療を受けている人など、一部負担金等を払わない患者さんについても、明細書を無償で発行しなければならない、としています(療養に要する費用の全額が公費でまかなわれるものは除かれます)。

ここにも診療所の例外があり、いつも渡すのが難しい正当な理由があるなら、求められたときに渡せば足ります。理由の形は先ほどと似ていて、こうした患者さん向けの発行機能がレセプトコンピュータに付いていない場合と、自動入金機の改修が要る場合です。掲示と届出の扱いも同じで、すでに届け出ている診療所なら、別に出し直さなくてよいとされています。

掲示は、院内だけで終わらない

もう1つ、押さえておきたい項目があります。通知は、明細書の発行の状況について院内に貼ることになっている事柄を、原則としてウェブのサイトにも載せるとしています。ただし、医院が自分で持っているホームページ等がない場合は、この限りではありません(同通知 記の15)。

ホームページを持っている医院は、院内に貼った紙と同じ内容が、サイトにも載っている状態を作ることになります。医院のサイトに手を入れるときは、書ける内容の制限も同時に関わってきます。そちらは歯科医院の医療広告ガイドライン、点検する8か所にまとめました。

会計窓口の掲示についても、通知は文面まで示しています。明細書には、使った薬の名前や行った検査の名前が載ること。ご家族が代わりに会計をするときの分も含めて、いらない人はあらかじめ言ってほしいこと。病名を知らせることや、患者さんのプライバシーへの配慮から置かれた一文です。文例は別紙様式7が参考に挙がっています。

費用を取るとき、取らなくてよいとき

明細書を出すのにお金を取る場合、通知は上限の考え方を示しています。かかった実費くらいに収め、社会的に見て妥当な範囲にするのが適当だ、というのが軸です。そのうえで、受け取りの妨げになるような高い料金を置いてはならないとし、たとえば1,000円を上回る額は実費とは言いがたい、と書いています(同通知 記の11)。

逆に、手間が減る扱いもあります。無料で出している領収証のほうに、診療報酬の点数をどの項目で算定したかが分かる明細が載っているなら、それで明細書を出したものとして扱われます。この場合、患者さんに求められても、別にもう1枚 出す必要はありません。レセコンの設定を変えて領収証を詳しくするほうが、運用としては軽くなることがあります。

なお、レセプトの電子請求が義務づけられていない側の保険医療機関にも、掲示の話は残ります。出しているかどうか、手続き、お金を取るかどうか、取るならその額を、院内に掲げることとされています。

今日 確かめられること

  • 領収証を1枚 手に取る。点数表の部ごとに、金額の内訳が分かれているかを見ます。
  • 明細書を毎回 出しているかを確かめる。出していないなら、正当な理由の届出をしているかを確かめます。
  • 届出をしているなら、8月1日現在の報告をしたかを確かめる。
  • ホームページの有無を確かめる。あるなら、院内掲示と同じ内容が載っているかを見ます。
  • 古い通知が綴じてあれば、差し替える。令和6年3月5日付けのものは、すでに廃止されています。

まとめ

  • 領収証は、費用の区分が分かる形にして、無償で交付しなければなりません(療養担当規則 第5条の2第1項)。正当な理由があるときは、この限りではありません。
  • 明細書は、厚生労働大臣の定める保険医療機関が交付しなければならないもので、その交付は無償で行わなければなりません(同 第2項・第3項)。
  • いま生きている通知は、令和8年3月5日付けの保発0305第18号です。令和6年3月5日付けのものは令和8年5月31日限りで廃止されました。
  • 歯科の領収証は、点数表の各部が単位で、そこまで内訳が割れているものとされ、別紙様式2が標準です。
  • 明細書を毎回 出さなくてよい正当な理由に挙がっているのは、レセプトコンピュータに発行の機能が無い場合と、自動入金機の改修が要る場合の2つです。院内の掲示と地方厚生局長への届出、そして毎年8月1日現在の報告が伴います。
  • この正当な理由は、令和10年以降に標準型のレセプトコンピュータが配られる時期をめどに廃止する予定だ、と書かれています。
  • 院内に貼ることになっている事柄は、原則としてウェブのサイトにも載せます(医院が自分で持つホームページ等がない場合を除く)。

紙の書式より先に、まず自院がどちら側にいるかを確かめるところからです。領収証を1枚、手に取ってみてください。

当たった資料

事務長AIなら、ここが変わります

事務長AIには、届出まわりを置く「施設基準・届出」と、これから来る締切を並べる「期限」(開くと「これから来るもの」)があります。年に一度の報告日を、そこへ置けます。院内やサイトの掲示を直す作業は「SNS・ホームページ」と「タスク」で追えます。レセプトの状況は「レセプト」です。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

歯科医院 × AI

この記事の作業、
事務長AIなら画面の順番どおりに進むだけです。

発注・お金・人・シフト・集患。紙とファックスの仕事を、ひとつの画面に。
やることが画面に並び、誰が何をしたかが残ります。院長は承認だけです。

1医院あたり 月額

29,800円 (税抜)

先着10医院様は、初期費用300,000円が無料

30分、画面を見てみる

フォームは1分で終わります。しつこい営業はしません。できないことも、その場で正直にお伝えします。

この記事を書いた人

近藤 宏海
近藤 宏海 株式会社ガラパゴスワークス 代表取締役

院長、その事務、ひとりで抱えていませんか。

私は歯科医院の事務の現場で、医院の開業から日々の運営まで、発注・納品・人の手続き・お金の管理を担ってきました。いまは歯科医院の開業コンサル・経営コンサルとして、ほかの医院の立ち上げや立て直しにも関わっています。

現場で「これがあれば」と感じたものを、自分の手で形にしたのが「事務長AI」です。いまも導入先の医院で使っていただきながら、改良を続けています。

記事では、現場で実際にぶつかった困りごとを、公的な資料で裏付けながら、明日から使える形でお伝えします。

代表あいさつを読む

目次