歯科医院の医療広告ガイドライン、点検する8か所

歯科医院のホームページと医療広告ガイドライン ── 院長が30分で点検する8か所

自院のホームページを、最後に自分の目で読んだのはいつでしょうか。業者に作ってもらってから、中身を確かめていない。そういう状態ではないでしょうか。

結論から書きます。自院のホームページは、医療法でいう「広告」です。看板やチラシと同じ規制がかかります。そして、書いてよいことは法律で決められています。書きたいことを書ける紙ではありません。

厚生労働省のネットパトロール事業(令和7年度)によると、令和7年度に違反ありとされた1,842サイトのうち、歯科は377サイトでした。この377サイトで見つかった違反は1,159件、1サイトあたり3.1件です(2026年2月28日時点)。

この記事では、院長が業者を呼ばずに自分で確かめられることを整理し、最後に30分でできる8か所の点検を置きます。根拠になる指針は令和8年3月に改正されました。いま厚生労働省が出しているものの名前は「医療広告等ガイドライン」です。

目次

そもそも、自院のサイトは「広告」なのか

厚生労働省の医療広告等ガイドラインは、次の3つをすべて満たすものを医療広告として扱う、としています。

  • 誘引性。患者に受診してもらう意図があること
  • 特定性。医院や歯科医師の名前が分かること
  • 内容が、歯科医業や診療所に関するものであること

医院名を出して診療内容を紹介しているホームページは、この3つを普通に満たします。だから広告です。ページの隅に「これは広告ではありません」と書いても外れません。同ガイドラインは、規制を避ける目的の断り書きがあっても実質は広告として扱う、としています。

逆に、対象から外れるものもあります。

もの扱い理由
スタッフの求人ページ・求人広告広告規制の対象外受診してもらうためのものではないため
院内の掲示、院内で配るパンフレット対象外読むのはすでに来院している患者だから
患者が自分で書いた口コミ、患者個人のSNS原則 対象外医院が頼んだのでなければ、誘引性がないため
医院のホームページ、SNSの医院アカウント対象3つの要件を満たすため

ただし、口コミの扱いには続きがあります。医院が費用を持ったり、便宜をはかったりして掲載を頼んだ場合は、誘引性があるものとして扱われます。有償・無償を問わず、医院が患者やその家族に「良い口コミを書いてください」と頼んだ時点で、それは広告になります。そして、その口コミが治療の内容や効果に触れていれば、あとの章で書くとおり禁止される側に落ちます。

歯科では、どこが引っかかっているのか

ネットパトロール事業(令和7年度)の資料には、歯科の377サイトで見つかった1,159件の内訳が載っています。

違反の種類歯科での件数
広告が可能とされていない事項の広告373
誇大広告273
治療の前後の写真(ビフォーアフター)161
比較優良広告144
その他(費用の強調など、品位を損ねるもの)115
治療の内容や効果に関する体験談59
虚偽広告34

数え方の断りを先に書きます。これは通報のあったサイトと、厚生労働省の委託事業者が自分で探しに行ったサイトを審査した結果です。全国の歯科医院を調べた数字ではありません。割合を出して「歯科の何割が違反」と読むことはできません。

そのうえで、内訳の形には意味があります。いちばん多いのは、嘘をついたことでも大げさに言ったことでもなく、そもそも広告してよい事項の外にあることを書いていたという型です。「書ける事項が決まっている」ことを知らないまま作られた、ということです。

同ガイドラインが挙げている例を、歯科に引き寄せるとこうなります。

  • 「日本一」「県内一」「最高の」といった最上級の言い方。事実であっても使えません(比較優良広告)
  • 著名人との関係を強調する書き方。芸能事務所と提携している、著名人も通っている、など(比較優良広告)
  • 「比較的安全な手術です」。何と比べて安全なのかが不明なため、誇大広告として扱われます
  • 活動の実態がない団体による「◯◯学会認定医」「◯◯協会認定施設」(誇大広告)
  • 「今なら◯円でキャンペーン中」「◯◯し放題プラン」といった費用の強調(品位を損ねる広告)
  • 「無料相談の方 全員にプレゼント」など、診療の中身と関係のない誘い方(同上)

体験談と、治療前後の写真

この2つは、法令にはっきり書かれています。根拠は医療法施行規則第1条の9で、第1号が体験談、第2号が治療前後の写真です。

体験談は、広告できません。患者本人の感想も、家族から聞いた話も同じです。禁じられているのは、治療の内容や効果についての主観的な感想を、医院への誘引を目的として紹介することです。

治療前後の写真のほうは、条件付きです。施行規則が禁じているのは、治療の内容や効果について患者に誤解させるおそれのある写真です。同ガイドラインは、通常必要になる治療の内容、費用、主なリスクや副作用についての詳しい説明を写真に添えていれば、これに当たらないとしています。

ここで落とし穴になるのが、説明の置き場所です。同ガイドラインは、リンクを押した先の別ページに書くことや、良いところの説明に比べて極端に小さい字で書くことを、してはならない形として名指ししています。矯正やホワイトニングの症例写真を並べているなら、ここを見てください。

もうひとつ、説明を添えれば載せてよい、ではありません。同ガイドラインは、治療の効果に関することはもともと広告してよい事項に入っていないため、あとの章で書く「限定解除」の条件を満たしていないページでは、治療前後の写真そのものを広告できないとしています。条件は2段になっている、と読んでください。

名乗れる言葉は決まっている ── 診療科名と、肩書き

歯科で広告できる診療科名は、歯科・小児歯科・矯正歯科・歯科口腔外科です。同ガイドラインが歯科の組み合わせとして挙げている例は「小児矯正歯科」です。看板やホームページに独自の科名を作って出すことはできません。

専門医の肩書きも、名乗れる範囲が決まっています。同ガイドラインによれば、日本歯科専門医機構が認定する資格のうち、基本的な診療領域にあたるものを広告できます。歯科医師の場合、その領域は次のとおりです。

  • 歯周病/歯科保存/補綴歯科
  • 口腔外科/歯科麻酔/歯科放射線
  • 小児歯科/矯正歯科

これに加えて、以前から厚生労働省に届け出ていた団体の資格(歯科医師は5団体5資格)も、当分の間は広告できるとされています。どの団体のどの資格かは厚生労働省が公表しています。広告するときは、認定した団体の名前を必ず併記します。「◯◯専門医」とだけ書くのでは足りません。なお、機構の認定を広告するなら、同じ基本的な診療領域について学会の認定も並べて広告することはできません。

非常勤の歯科医師の資格を出すこと自体は差し支えありませんが、常勤だと誤解される書き方は誇大広告として扱われます。非常勤であることや勤務する曜日を添えてください。

自費の説明を載せるなら ── 「限定解除」の4つの条件

ここまで読んで、「では自費の説明はほとんど書けないのか」と思われたかもしれません。そうではありません。ホームページには、条件を満たせば広告できる事項の枠を外す仕組みがあります。これを広告可能事項の限定解除といいます。根拠は医療法施行規則第1条の9の2です。

条件いつ必要か
1患者が自分から探して見にくるサイトであること常に
2載せた内容について問い合わせられる連絡先を明示すること常に
3その自費診療で普通に必要になる治療の内容と費用を示すこと自費の情報を載せるとき
4その自費診療の主なリスクや副作用を示すこと自費の情報を載せるとき

1について、同ガイドラインは、検索連動型のバナー広告や、費用を払って検索結果の上位に出るようにしたものは、この条件を満たさないとしています。

2の連絡先は、電話番号やメールアドレスを指します。

3で求められているのは、治療名と最低金額だけを見せることではありません。同ガイドラインは、普通に必要になる治療内容、標準的な費用、治療にかかる期間と回数まで示すよう求めています。金額が一つに定まらないなら、最低額から最高額までの幅で示す。よく発生する追加費用も、その幅に含めて考える。矯正のように期間の長い治療ほど、ここが効いてきます。

4のリスク・副作用は、良いところの説明と釣り合う形で、同じ画面に、読める大きさで書きます。3と4は、ビフォーアフター写真を載せるときに求められる説明と重なります。

個別の治療については、厚生労働省の医療広告等ガイドラインに関するQ&Aに歯科の項目があります。要点はこうです。

  • 「審美治療」という言葉は広告できません。含まれる治療がさまざまで、どれを行うのかが分からないため、というのが理由です。ただし、限定解除の条件を満たしたホームページであれば書けます
  • ホワイトニングは、承認された医薬品を使い、自費である旨と標準的な費用を書けば広告できる、とされています
  • 歯科用インプラントは、医療機器として承認されたものを使う治療であれば、公的医療保険が使えない旨と標準的な費用を併記した場合に限って広告できる、とされています

言い換えると、費用を書かずに自費の治療名だけを並べているページが、いちばん危ないということです。

指摘されたら何が起きるか、そして今日30分でできる点検

見つかり方と、その後の順番

入口は2つあります。誰でも使える通報窓口と、委託事業者が自分で探しに行く監視です。令和7年度の資料では、違反ありとされた1,842サイトのうち1,819サイトに、医療機関への通知が出ています。2回目の改善確認でも直っていなかったのは389サイトで、そこから所管の自治体へ改善指導の依頼が回ります。

その先の手は、医療法に書かれています。第6条の8第1項で、都道府県知事などは報告を命じたり、事務所に立ち入って検査したりできます。第2項では、期限を切って広告の中止や是正を命じることができます。

罰則もあります。虚偽広告(第6条の5第1項違反)と、中止・是正命令に従わなかった場合は、6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です(第87条)。虚偽広告は、行政の命令を待たずに直接 罰則の対象になる点が、ほかの類型と違います。

1つ補足します。同ガイドラインは、この罰則を「懲役」と書いています。ですが、e-Gov法令検索で読める現行の第87条は「拘禁刑」です。条文のほうが正しいと考えてください。

とはいえ、いきなり罰則が来るわけではありません。まず通知が届き、直せば終わります。届いてから慌てるより、先に見ておくほうが早く済みます。

今日30分でできる点検

自院のサイトを開いて、上から順に見ていきます。

  1. 「患者様の声」「体験談」のページを探す。あれば、治療の内容や効果に触れている部分を外す
  2. 症例写真を探す。治療内容・費用・期間・回数・主なリスクが、同じ画面に、読める大きさで書かれているかを見る
  3. 最上級の言葉を探す。「日本一」「地域No.1」「最高」「最先端」。1つでもあれば消す
  4. キャンペーンの表示を探す。期間限定、割引、モニター募集、プレゼント。費用の強調に当たらないかを見る
  5. 自費の治療名を並べたページを探す。費用とリスクが書かれていなければ、そこを足す
  6. 肩書きを確かめる。「◯◯専門医」に認定団体の名前が添えられているか。広告できる資格かどうかを確かめる
  7. 連絡先を確かめる。電話番号かメールアドレスが、分かる場所にあるか
  8. 医院のSNSも同じ目で見る。医院のアカウントの投稿は広告に当たります。院長個人のアカウントでも、医院が分かって受診を誘う内容なら同じです

直すべき箇所が見つかったら、そのページのURLと直す内容を書き出して、制作会社に渡します。「ガイドラインに合わせて直して」とだけ伝えるより、どのページの、どの文を、なぜ直すのかまで書いた依頼のほうが、そのまま作業指示になります。

それでも残る面倒

  • 一度 直しても、また増えます。キャンペーンの告知、新しい症例、スタッフの投稿。増える場所は決まっているので、載せる前に見る係を決めておくほうが早いです
  • 判断が割れる箇所が残ります。この記事に書いたのは、指針と条文にはっきり書かれていることだけです。厚生労働省は、都道府県・保健所設置市・特別区に広告の相談窓口を明確にするよう求めています。自院の書きぶりが当たるかどうかは、そこへ聞くのが確実です
  • 指針そのものが変わります。令和8年3月に改正されたばかりです。年に一度は版が変わっていないかを見てください

まとめ

  • 自院のホームページは医療法上の「広告」。求人ページ・院内掲示・患者が自分で書いた口コミは、原則として対象外
  • 歯科で最も多い指摘は、嘘や誇張ではなく広告してよい事項の外にあることを書いていたという型(令和7年度は歯科377サイトで1,159件、うち373件がこの型)
  • 体験談は広告できない(無償でも、医院が頼んだ時点で広告になる)。治療前後の写真は、限定解除の条件を満たしたページで、治療内容・費用・リスクの説明を同じ画面に添えたときだけ載せられる
  • 自費の説明は、限定解除の4条件(自分から見にくるサイト/連絡先/内容と費用/リスク)を満たせば書ける
  • 指摘の流れは、通知 → 改善確認 → 自治体へ情報提供 → 中止・是正命令。虚偽広告と命令違反には罰則がある(医療法第87条)。今日30分、体験談・症例写真・最上級表現・キャンペーン・自費の費用・肩書き・連絡先・SNSの8か所を見る

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サイトの点検を代わりに行う機能はありません。できるのは、忘れない形にすることです。点検をタスクとして置き、やった記録を残せます。クチコミ・SNS・集患の記録も同じ場所にまとまるので、「いつ何を載せたか」を後から追えます。手順はマニュアルに置いておけば、担当が替わっても同じやり方で回せます。

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この記事を書いた人

近藤 宏海
近藤 宏海 株式会社ガラパゴスワークス 代表取締役

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私は歯科医院の事務の現場で、医院の開業から日々の運営まで、発注・納品・人の手続き・お金の管理を担ってきました。いまは歯科医院の開業コンサル・経営コンサルとして、ほかの医院の立ち上げや立て直しにも関わっています。

現場で「これがあれば」と感じたものを、自分の手で形にしたのが「事務長AI」です。いまも導入先の医院で使っていただきながら、改良を続けています。

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