昼休みに受付のスタッフが電話を取り、業者の来訪にも応じている。こういう状態、ありませんか。先に結論を書きます。昼休み中の電話や来客の対応は、厚生労働省の説明では勤務時間に入ります。当番で昼休みが削られたなら、医院は別に休憩を与えなければなりません。一方で、歯科医院は休憩を全員そろって取らせなくてもよい業種に入っています。つまり当番を回すこと自体はでき、当番の人の休憩を別の時間に置けばよい、という話になります。
働かせてよい時間の上限と36協定は歯科医院に36協定は必要かで扱いました。この記事は、その時間の「途中に置く休憩」の長さと中身を扱います。
休憩の長さは「6時間を超えたら45分、8時間を超えたら1時間」
休憩の長さは労働基準法第34条第1項が決めています。労働時間が6時間を超える日は少なくとも45分、8時間を超える日は少なくとも1時間です。そして休憩は、労働時間の途中に置く必要があります(労働基準法第34条・e-Gov法令検索)。
| その日の労働時間 | 休憩の最低ライン(第34条第1項) |
|---|---|
| 6時間まで | 条文上の義務はない |
| 6時間を超え、8時間まで | 45分以上 |
| 8時間を超える | 1時間以上 |
表の読み方で注意したいのは2点です。
- 線は「超える」で引かれています。6時間ちょうどなら第1項の義務には掛からず、8時間ちょうどなら45分で足ります。午前だけの土曜診療や、短時間のパートの日は、ここで分かれます
- 条文の主語は「労働時間が」です。契約上は8時間以内の日でも、診療が押して実際の労働時間が8時間を超えた日は、1時間の線で見ることになります。45分の休憩で組んでいる医院は、延びた日の扱いを決めておくと迷いません
第34条に違反した場合の罰則は、同法第119条にあります。6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金です(労働基準法第119条・e-Gov法令検索)。
昼休みの電話番・来客対応は、休憩に入らない
休憩は長さだけでなく、中身も条文で決まっています。第34条第3項は、休憩時間を労働者に自由に利用させることを使用者に求めています(労働基準法第34条・e-Gov法令検索)。
厚生労働省は、昼休みに電話や来客に応じる当番がある職場からの質問に、次の趣旨で答えています(厚生労働省 よくある質問(昼当番と勤務時間))。
- 休憩は、労働から離れることが権利として保障されている時間でなければならない。待機のような、いわゆる手待時間は休憩に含まれない
- 昼休み中の電話や来客への対応は、明らかに業務とみなされ、勤務時間に含まれる
- 当番で昼休みが費やされたら、会社は別に休憩を与えなければならない
手待時間の中身は、厚生労働省の労働時間のガイドラインにも書かれています。使用者から指示があればすぐ仕事に就くよう求められていて、仕事から離れることが保障されていない状態で待っている時間です。ガイドラインはこれを労働時間の例に挙げ、労働時間かどうかは就業規則などの定めではなく、客観的に見て判断されるとしています(厚生労働省 労働時間の適正な把握のためのガイドライン(PDF))。
医院に当てはめると、見るべきは「昼休み」という名前ではありません。受付に座ったまま、鳴った電話を取るよう頼んでいるか。急患が来たら対応するよう求めているか。そうした時間は、就業規則やシフト表に「休憩」と書いてあっても、休憩として数えられない可能性があります。
歯科医院は、休憩を交替で取らせてよい
第34条第2項は、休憩を一斉に与えることを原則にしています。例外は、労働者の過半数を代表する者などとの書面による協定(労使協定)がある場合です(労働基準法第34条・e-Gov法令検索)。
ただし業種による例外が別にあります。労働基準法施行規則第31条は、労働基準法の別表第一の第13号などに当たる事業について、この第2項を適用しないと定めています(労働基準法施行規則第31条・e-Gov法令検索)。第13号は、病者又は虚弱者の治療、看護その他保健衛生の事業です(労働基準法 別表第一・e-Gov法令検索)。歯科診療所は病者の治療を行う事業ですから、条文の言葉のうえでは、ここに入ります。厚生労働省のモデル就業規則の解説も、一斉に休憩を与えなくてもよい事業として、保健衛生業(別表第一の第13号)を挙げています(厚生労働省 モデル就業規則 第4章の解説(PDF))。
ここで外れるのは「一斉に」の部分(第2項)です。長さの線(第1項)と、自由に利用させること(第3項)は、そのまま残ります。交替にしてよいことは、当番の人の休憩を削ってよいことを意味しません。
今日からできること
ここからは、条文と厚生労働省の資料を踏まえた、私たちからの提案です。資料が示している手順ではありません。
- 曜日ごとに、スタッフ別の労働時間と休憩を並べる。その日の労働時間が6時間・8時間の線のどちら側にあるかを見て、休憩が45分・1時間に届いているかを確かめます。平日と土曜で線が変わる人がいます
- 昼休みに誰が何をしているかを書き出す。電話を取る、業者を迎える、滅菌器の終わりを待つ。医院が頼んでいる動きがあれば、その時間は休憩から外して考えます
- 当番を置くなら、当番の人の休憩を別の時間帯に決める。午前の診療の後半、午後の診療の前など、その人が確実に仕事から離れられる時間です。シフト表に当番と、その日の休憩の時間を並べて書いておきます
- 記録を実態に合わせる。ガイドラインは、使用者が労働日ごとの始業・終業の時刻を確認し、記録することを求めています。また、自己申告した時間を超えて院内にいた理由をスタッフに報告させる場合について、休憩などで労働時間ではないと報告されていても、実際には指示を受けて業務に就いていたなど、使用者の指揮命令の下にあったと認められる時間は、労働時間として扱う必要があるとしています(厚生労働省 労働時間の適正な把握のためのガイドライン(PDF))
それでも残る面倒
- 診療が押す日は、休憩が日ごとに変わる。予定表の休憩ではなく、その日に実際に取れた休憩で線に当てる必要があり、毎日の記録と照らし合わせる手間が残ります
- 管理監督者に当たるかは、肩書きでは決まらない。第41条は、監督若しくは管理の地位にある者などに、労働時間・休憩・休日の規定を適用しないと定めています(労働基準法第41条・e-Gov法令検索)。ガイドラインによれば、管理監督者に当たるかは、役職名にとらわれず、仕事の中身などの実態を見て判断されます。管理監督者の意味として説明されているのは、労働条件を決めることを含む労務管理で、経営者と一体といえる立場の人です(厚生労働省 労働時間の適正な把握のためのガイドライン(PDF))
- 判断に迷う待ち方がある。院内で食事をしながら、急患があれば呼ばれるかもしれない、という状態をどう見るかは、医院が何を指示しているかで変わります。迷ったら、所轄の労働基準監督署に相談できます
まとめ
- 休憩の長さは、労働時間が6時間を超えたら45分以上、8時間を超えたら1時間以上(労働基準法第34条第1項)
- 昼休みの電話や来客の対応は勤務時間に入り、当番で昼休みが削られたら、別に休憩を与える必要がある(厚生労働省 よくある質問)
- 歯科医院などの保健衛生業は、休憩を一斉に与えなくてよい(労働基準法施行規則第31条)。ただし長さと自由利用の決まりは残る
- まずは曜日別の労働時間と休憩、昼休みの実際の動きを並べて、線に届いているかを見る
リンク一覧(e-Gov・厚生労働省・労働局)
- 労働基準法(e-Gov法令検索) 第34条・第41条・第119条・別表第一
- 労働基準法施行規則(e-Gov法令検索) 第31条
- 厚生労働省 よくある質問(昼当番と勤務時間)
- 厚生労働省 労働時間の適正な把握のためのガイドライン(PDF)
- 厚生労働省 モデル就業規則 第4章の解説(PDF)
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勤怠に、職員ごと・日ごとの出勤・退勤・休憩の分数を入れられます。労働時間は退勤から出勤と休憩を引いて出るので、当番の日の休憩を実際の分数で入れておけば、その日の数字がそのまま残ります。雇用契約にも休憩の分数を記録でき、医院の曜日ごとの診療時間と休憩も登録できます。

