開業のときに出した、エックス線装置の届出。その控えがどこにあるか、すぐに言えますか。撮影をする勤務医が入れ替わったとき、保健所に何か出しましたか。最後に放射線の量を測ったのは、いつでしょうか。
先に結論を3つ。①エックス線装置は、備えたとき・届け出た事項を変えたとき・備えなくなったときに、それぞれ10日以内の届出があります。変えたときの中には、エックス線診療に従事する歯科医師の氏名も入っています。②放射線の量の測定は、診療を始める前に1回。その後はひと月を超えない期間ごとに1回です。装置を固定して取り扱い、使い方と遮蔽物の位置の両方が一定している場合は、6か月を超えない期間ごとに1回になります。③測定の結果は、記録を5年間保存します。
根拠は医療法と医療法施行規則、勤務医やスタッフを使って撮影をしている医院ではあわせて電離放射線障害防止規則(以下、電離則)です。この記事では、エックス線診療室とそのまわりで放射線の量を測ることを「漏えい線量の測定」と呼びます。条文の語は「放射線の量」の測定です。
スタッフの電離放射線健康診断は歯科医院の健康診断 ── 年1回と、パートはどこからで、妊娠したスタッフの線量の上限は歯科医院のスタッフが妊娠したら ── 産前産後と線量で扱いました。この記事は、人ではなく装置と部屋のほうの届出と測定の話です。
届出は3つの場面 ── 備えた・変えた・やめた
医療法第15条第3項によると、診療に使うエックス線装置を備えたときや、厚生労働省令で定める場合には、病院や診療所の管理者は、その所在地の都道府県知事に届け出なければなりません。届け出るやり方も、省令が定めます(e-Gov法令検索 医療法)。
その省令が医療法施行規則です。第24条の2によると、届出の対象になるのは、定格出力の管電圧(波高値)が10キロボルト以上で、かつ、エネルギーが1メガ電子ボルト未満の装置に限られます。こうした装置を備えたら、10日以内に届出書を出します(e-Gov法令検索 医療法施行規則)。届出書に書く事項は次の5つです。
- 医院の名称と所在地
- 装置の製作者名、型式、台数
- 高電圧発生装置の定格出力
- 装置と診療室について、エックス線による障害を防ぐための構造設備と予防措置の概要
- エックス線診療に従事する歯科医師など(医師・診療放射線技師・診療エックス線技師も含みます)の氏名と、エックス線診療の経歴
医療法施行規則第24条は、届出が要る場合を並べています。そのうち第10号が、上の第2号から第5号までの事項を変更した場合。第12号が、エックス線装置などを備えなくなった場合です。同規則第29条第1項によると、この2つの届出も10日以内に、その旨を書いた届出書を出して行います。
ここからは筆者の読み方です。変更の対象に第5号が入っているので、エックス線診療に従事する歯科医師が替わったときも、届け出た事項が変わったことになります。撮影をする(エックス線診療に従事する)勤務医の採用や退職は、装置の届出にもつながっています。大阪市の案内ページも、変更届の対象に、装置の更新や増設・移設・廃棄、診療室の変更とあわせて、放射線診療に従事する人(医師・歯科医師・診療放射線技師)が変わった場合を入れています(大阪市 エックス線装置等に関する届出)。
出す先は、自治体のページで確かめる
条文の宛先は都道府県知事ですが、実際の窓口は自治体で違います。2つ例を挙げます。
- 大阪市:病院・診療所の所在地の各区保健福祉センター保健業務担当へ出す、としています。診療用エックス線装置の備付届・変更届・廃止届は、それぞれ備付後・変更後・廃止後の10日以内で、届出部数は2部です。行政オンラインシステムでも手続きができる、と書かれています(大阪市のページ)。
- 岐阜県:所在地を管轄する保健所へ出す、としています。岐阜市内に医院がある場合は、岐阜市保健所が問い合わせ先と提出先です。設置届・変更届・廃止届とも提出時期は10日以内で、手数料は不要です(岐阜県 診療用エックス線装置に関する手続き)。
同じ届出でも、呼び名(備付届・設置届)や様式、部数が違います。様式は医院の所在地の自治体のページから取り、分からないところは窓口に聞くのが確実です。なお大阪市のページは、法令で定められた人以外が業として官公署に出す書類を作ることは法令違反になる、と注意書きを添えています。
漏えい線量の測定 ── 診療前に1回、その後は定期に
医療法施行規則第30条の22第1項によると、医院の管理者は、放射線による障害が起きるおそれのある場所で放射線の量などを測り、結果の記録を5年間保存しなければなりません。測る時期は、診療を始める前に1回。診療を始めてからは、ひと月を超えない期間ごとに1回です。
同じ項の第1号に当たる測定は、間隔が6か月を超えない期間ごとに1回になります。第1号は、装置を固定して取り扱う場合で、しかも使い方と、遮蔽壁などの遮蔽物の位置の両方が一定しているときに、次の場所で放射線の量を測るものです。
- エックス線診療室
- 管理区域の境目
- 院内の、人が住んでいる区域
- 医院の敷地の境目
同条第2項によると、放射線の量は、原則として1センチメートル線量当量率か1センチメートル線量当量で測ります。ただし書があり、70マイクロメートル線量当量率(または線量当量)が、1センチメートルのほうの十倍を超えそうな場所では、70マイクロメートルのほうで測ります。測るのにいちばん適した位置で、測定器を使います。測定器で測るのが著しく困難なときは、計算で出してもかまいません。
ここからは筆者の読み方です。6か月の間隔が使えるのは、固定して取り扱うことと、取扱いの方法と遮蔽物の位置が一定していることの両方がそろう場合です。どちらかが崩れれば、ひと月を超えない期間ごとに戻ります。装置を入れ替えた、診療室の間取りを変えた、というときは、届出だけでなく測定の間隔も見直す場面です。
もう1つ。1つ前の第30条の21は、装置が出す放射線量そのものを、6か月を超えない期間ごとに線量計で測る決まりです。ただ、そこに並んでいるのは、治療用のエックス線装置と、高エネルギーの放射線発生装置、粒子線の照射装置、放射線の照射装置の4種類です。見出しが「エックス線装置等の測定」なので紛らわしいのですが、歯科の撮影の装置で関係してくるのは第30条の22のほう、と筆者は読んでいます。
勤務医やスタッフが撮影する医院は、電離則の測定もある
医療法の決まりは、医院の管理者に向けたものです。働く人を守る側の決まりとして、放射線業務を行う事業の事業者に向けた電離則があります(e-Gov法令検索 電離放射線障害防止規則)。
電離則第2条第3項は、「放射線業務」を、労働安全衛生法施行令の別表第二に掲げる業務としています。その別表第二の第1号が、エックス線装置の使用、またはエックス線の発生を伴うその装置の検査の業務です(e-Gov法令検索 労働安全衛生法施行令)。ここからは筆者の読み方です。歯科の撮影もエックス線装置の使用なので、勤務医やスタッフに撮影をさせている医院は、この放射線業務を行う事業に当たり、電離則の決まりも見ておくことになります。
電離則第3条によると、外からの放射線と空気中の放射性物質による実効線量を合わせて、3月間で1.3ミリシーベルトを超えるおそれのある区域などが管理区域です。事業者はそこを標識で示し、必要のない人を入らせてはいけません。
電離則第54条第1項によると、事業者は管理区域で、外からの放射線の線量当量率か線量当量を、測定器を使って定期に測らなければなりません。間隔は1月以内ごとに1回です。放射線装置を固定して使い、使い方と遮蔽物の位置がどちらも一定しているとき(ほかに、3.7ギガベクレル以下の放射性物質を装備した機器を使うとき)は、6月以内ごとに1回になります。測るたびに次のことを書き留め、5年間保存します。
- 測った日時と箇所、方法と条件、そして結果
- 使った測定器の種類・型式・性能
- 測った人の氏名
- 結果を受けて講じた措置の概要
同条第4項によると、事業者は、測った結果(計算で出した場合はその結果)を、管理区域に入る人に知らせなければなりません。方法の例として、見やすい場所への掲示が挙がっています。
ここからは筆者の読み方です。医療法の測定と電離則の測定は、どちらも間隔の考え方(原則と、固定して一定なら6か月)が似ています。ただ、電離則のほうは記録の項目を細かく並べ、結果を管理区域に立ち入る人へ知らせることまで求めています。測定を外に頼んでいるなら、届いた報告書に上の項目がそろっているかを一度見ておくと、あとで探さずに済みます。掲示まで済んでいるかも、同じときに確かめられます。
帳簿と表示 ── 使用時間の記帳と、使用中の表示
医療法施行規則第30条の23によると、管理者は帳簿を用意して、室ごとに、装置を使った時間を1週間ぶんの延べで書き入れなければなりません。帳簿は1年ごとに閉鎖し、そこから2年間保存します。ただし書きがあり、天井・床・周りの壁の外側で、実効線量率が決められた値以下になるよう遮蔽してある室は、この記帳が要りません。治療用でない装置を使う診療室なら、その値は40マイクロシーベルト毎時です。
ここからは筆者の読み方です。記帳が要らないかどうかは、診療室の遮蔽がこの線量率以下に収まっているかで決まります。開業時や装置の入れ替え時の資料に、遮蔽の計算や測定の結果が残っていないかを確かめておくと、判断の根拠を示せます。分からなければ、装置を入れた業者か保健所に聞いてください。
表示の決まりもあります。どれも医療法施行規則です。第30条の4第3号は、エックス線診療室であると分かる標識を求めています。第30条の16では、管理者が管理区域にその旨の標識を付け、人がむやみに入らないよう手を打つことになっています。第30条の20第2項第1号は、装置を使っている間は診療室の出入口にそう表示することを、放射線診療をする歯科医師などに守らせるよう、管理者に求めています。
今日からできること
道具は要りません。紙とカレンダーでできることから並べます。
- 届出の控えを探す。備付届(自治体によっては設置届)の控えに、いまの装置の型式・台数と、エックス線診療に従事する歯科医師の氏名が書かれているかを見ます。
- 届け出た後に変わったことを書き出す。装置の入れ替え・増設・撤去、診療室の変更、エックス線診療に従事する勤務医の入れ替わり。変更や廃止の届出は10日以内です。出していないものが見つかったら、所在地の自治体の窓口に相談します。
- 最後の測定日と、測定の記録を確かめる。記録は5年間保存です。次の期日を、ひと月と6か月のどちらで数えるのかも、あわせて確かめます。
- 勤務医やスタッフが撮影するなら、電離則の記録と掲示も見る。上に挙げた記録の項目がそろっているか、結果が管理区域に立ち入る人に知らされているか。
- 記帳の要否を確かめる。遮蔽の資料が見つからなければ、使用時間の帳簿をつけるか、業者か保健所に聞いて決めます。
それでも残る面倒
この話の厄介なところは、届出と測定がそれぞれ別の出来事から始まることです。装置の入れ替えは設備の話、撮影をする勤務医の入れ替わりは人の話、測定は暦の話。このつながりが紙に書かれていないと、誰かに引き継ぐときに落ちます。
もう1つは、保存の期間が決まりごとに違うことです。測定の記録は5年間、使用時間の帳簿は閉鎖後2年間。同じ棚にしまうなら、捨ててよい時期がそれぞれ違うと分かる形にしておきます。
まとめ
- エックス線装置を備えたときは10日以内に届け出ます(医療法第15条第3項・医療法施行規則第24条の2)。対象は、管電圧が10キロボルト以上であり、かつ、エネルギーが1メガ電子ボルト未満の装置です。
- 届け出た事項のうち第2号から第5号までを変更した場合と、備えなくなった場合も、10日以内に届け出ます(同規則第24条・第29条第1項)。第5号には、エックス線診療に従事する歯科医師の氏名が入ります。
- 放射線の量は、診療を始める前に1回、その後はひと月を超えない期間ごとに1回測ります。固定して取り扱い、使い方と遮蔽物の位置の両方が一定なら、6か月を超えない期間ごとに1回です。記録は5年間保存します(同規則第30条の22)。
- 勤務医やスタッフが撮影する医院は、電離則第54条の測定と記録(5年間保存)、結果の周知もあります。エックス線装置の使用は、労働安全衛生法施行令の別表第二第1号の放射線業務です(電離則第2条第3項)。
- 使用時間の帳簿は1年ごとに閉鎖し、そこから2年間保存します。外側の実効線量率が決められた値以下になるよう遮蔽した室は、記帳が要りません(同規則第30条の23)。
条文と自治体の案内(出典)
- e-Gov法令検索 医療法
- e-Gov法令検索 医療法施行規則
- e-Gov法令検索 電離放射線障害防止規則
- e-Gov法令検索 労働安全衛生法施行令
- 大阪市 エックス線装置等に関する届出
- 岐阜県 診療用エックス線装置に関する手続き
事務長AIなら、ここが変わります
事務長AIの「期限」(開くと「これから来るもの」)に、次の測定の日を「期限の日」として置き、「担当(役割で指定します)」を決めておけます。届いた測定の結果は「証跡を足す(写真かPDF・10MBまで)」で、その期限に写真かPDFで付けられます。撮影をする勤務医が替わったときに届出を誰に頼むかは「タスク」に残ります。

