歯科医院の消防設備点検、報告は1年に1回

歯科医院の消防設備点検、報告は1年に1回

院内の消火器、最後に点検したのはいつでしたか。ビルの管理会社が年に一度まとめて見に来ている気がする。けれど、消防署に何かを出した覚えはない。そういう院長もいると思います。

先に結論です。消防用設備等の点検と、その結果の報告は、建物の「関係者」の義務です(消防法第17条の3の3)。入院の施設を持たない診療所は、消防法施行令の別表第一(6)項イに入ります。この区分の建物は、点検の結果を1年に1回、消防署長等に報告します(施行規則の第31条の6第3項)。テナントで入っている医院も、関係者のひとりです。この記事では、点検の間隔、自分で点検してよい医院とそうでない医院の分かれ目、報告の出し方を、条文と消防庁の資料で確かめます。

目次

点検と報告は「関係者」の義務 ── 消防法第17条の3の3

消防法第17条の3の3によると、第17条第1項の防火対象物(政令で定めるものを除く)の関係者には、2つの義務があります。1つは、その防火対象物の消防用設備等を、総務省令の定めに従って定期に点検すること。もう1つは、その結果を消防長又は消防署長(以下、消防署長等)に報告することです。誰が点検するかも同じ条が分けています。政令で定める防火対象物では、消防設備士の免状を受けている者か、総務省令の定める資格を持つ者に点検させます。それ以外の防火対象物では、関係者が自ら点検します(防火対象物点検の対象になっている建物についての括弧書きは、ここでは省きます)。

「関係者」が誰かは、同じ法律の第2条第4項が決めています。防火対象物又は消防対象物の、所有者、管理者又は占有者のことです。

罰則もあります。消防法第44条は、第17条の3の3の規定による報告をしなかった者と、虚偽の報告をした者を、罰金(30万円以下)又は拘留に処するとしています(同条第11号)。

ここからは筆者の読み方です。ビルの一室を借りて開業している医院は、所有者ではありませんが、占有者に当たります。ビルの管理会社が建物全体の点検を手配していることもあります。その場合でも、医院の区画の中にある設備まで見ているのか、報告書は誰の名前で出ているのかは、医院の側で確かめておく必要があります。

歯科医院は「1年に1回」の区分 ── 施行規則第31条の6

消防法施行令の別表第一は、建物を用途ごとに区分しています。(6)項イの(4)に挙がっているのが、患者を入院させるための施設を有しない診療所です。入院の施設を持たない歯科医院は、ここに入ります。

同じ別表の(16)項イは、複合用途の防火対象物です。そのうち、一部が(6)項の用途(診療所など)や、(1)項から(4)項、(5)項イ、(9)項イの用途に使われているものが、ここに入ります。

消防法施行規則第31条の6第3項によると、防火対象物の関係者は、点検を行った結果を維持台帳に記録し、あわせて、防火対象物の区分ごとに決められた期間で、消防署長等に報告しなければなりません。歯科医院に関係する区分を拾うと、期間は次のとおりです(表は一部です。特殊消防用設備等は、設備等設置維持計画で定める期間による、というただし書きもあります)。

施行令 別表第一の区分報告の期間
(6)項(診療所・病院など)1年に1回
(16)項イ(上の用途を含む複合用途の建物)1年に1回
(15)項(ほかの項に当たらない事業場。事務所など)、(16)項ロ(イ以外の複合用途の建物)3年に1回

維持台帳とは、消防用設備等の設置の届出に係る書類の写し、検査済証、点検の報告書の写し、工事や整備の経過一覧表その他の、維持管理に必要な書類を綴じたものだと、同じ項の括弧書きが定義しています。

ここからは筆者の読み方です。戸建ての歯科医院は(6)項、診療所が入っている複合用途のビルは(16)項イに当たるので、どちらでも報告は1年に1回の列になります。消防庁の点検アプリのリーフレットも、報告が1年に1回になる建物の例に、病院などと並べて、そうした施設がテナントで入っている建物を挙げています。

点検は6月ごとと1年ごと ── 消防庁告示第9号

点検の間隔は、施行規則第31条の6第1項を受けて、平成16年消防庁告示第9号が設備の種類ごとに決めています。点検には2種類あります。

  • 機器点検:見た目でわかること(機器がきちんと置かれているか、壊れていないか等)と、外観や簡単な操作で確かめられる機能を見る。非常電源のうち自家発電設備と、動力消防ポンプについては、正常に動くかを見る
  • 総合点検:設備を実際に動かす、又は使ってみて(全部でも一部でもよい)、全体として機能するかを確かめる

告示の表から、診療所に付いていることのある設備を拾うと、次のようになります(表の全部ではありません)。

設備機器点検総合点検
消火器具、誘導灯、誘導標識6月表に定めなし
自動火災報知設備(特定小規模施設用のものを含む)、避難器具、非常警報の器具と設備6月1年

ここからは筆者の読み方です。何を何か月ごとに見るかは、医院に何が付いているかで決まります。まず院内の設備を書き出すことが出発点です。開業のときの設置の届出や検査済証の写しが、維持台帳に綴じてあれば、そこに書いてあります。

自分で点検してよいか ── 施行令第36条第2項

消防法施行令第36条第2項によると、次の防火対象物は、消防設備士か、総務省令の定める資格を持つ者(消防設備点検資格者。以下、2つあわせて消防設備士等)に点検をさせなければなりません。

  1. 延べ面積が千平方メートル以上の、別表第一の(6)項・(16)項イなどの防火対象物(ほかに(1)〜(4)項、(5)項イ、(9)項イ、(16の2)項、(16の3)項)
  2. (5)項ロや(7)項など、1つ目以外の区分で延べ面積が千平方メートル以上のもの。ただし、火災予防上必要があると消防署長等が認めて指定したものに限る
  3. 上の2つのほか、(6)項などの用途((1)〜(4)項、(5)項イ、(6)項、(9)項イ)に使う部分が避難階以外の階にある防火対象物で、その階から避難階か地上へ直通する階段が2つ以上ないもの(屋外の階段や、総務省令の定める避難上有効な構造の階段なら、1つ以上)
  4. 上の3つのほか、消防設備士等の点検が特に必要だとして総務省令が定めるもの

消防庁の点検報告制度の説明資料は、3つ目を「特定一階段等防火対象物」と呼んでいます。

ここからは筆者の読み方です。歯科医院で気にしたいのは、1つ目と3つ目です。

  • 延べ面積:複合用途のビルは、建物全体が1つの(16)項イの防火対象物です。筆者は、千平方メートルもビル全体で見るものと読んでいます。医院の区画が小さくても、ビルが大きければ1つ目に当たりえます
  • 階段:避難階以外の階(たとえば、1階が避難階のビルの2階や3階)に入っている医院で、その階から地上へ直通する階段が屋内に1本しかないビルは、3つ目に当たる可能性があります(その1本が総務省令の定める避難上有効な構造なら別です)。この場合、面積に関係なく、資格を持つ人の点検になります

どちらも、建物のつくりで決まる話です。自院が当たるかどうか迷う場合は、ビルの管理会社か、管轄の消防署に確かめてください。

自ら点検する場合の道具 ── 消防庁のパンフレットとアプリ

上の4つに当たらない医院は、関係者が自ら点検し、報告できます。消防庁は、そのための自ら行う点検報告のパンフレットを出しています。扱っているのは、消火器、誘導標識、非常警報器具、特定小規模施設用の自動火災報知設備の4つです。パンフレットの冒頭には、建物によっては消防設備士等に点検をさせる必要がある、という断りが付いています。

消火器の点検票の記入例には、内部の点検についての注記があります。内部点検が要らないのは、製造年から5年(加圧式の消火器は3年)を過ぎていないもの、という内容です。パンフレットの1ページ目では、製造年から5年を超えている場合の行き先として、消防設備業者等に依頼する、消火器を買い替える、などを挙げています。

消防庁は、消防用設備等点検アプリも配っています。リーフレット(2021年3月版)によると、点検に関する資格がない人でも、自分で点検をして、消防署等への報告書を作れるアプリです。点検できるのは上と同じ4つの設備ですが、条件が付いています。消火器は、内部と機能の点検が要らないもの(加圧式は製造年から3年以内、蓄圧式は製造年から5年以内)に限ります。誘導標識は、蓄光式のものと、電気で光るものを除きます。

同じリーフレットは、報告までの流れを、アプリで点検し、法令の様式のPDFを出力し、それを消防署等に届け出る、と描いています。届け出る手段の例は、電子メール、郵送、直接持参等です。スマートフォンを使わない場合は、消防庁のホームページから報告書の様式をダウンロードして、パソコンや手書きで作れる、とも書いています。

ここからは筆者の読み方です。どの手段で受け付けるかは、管轄の消防署によって違うかもしれません。初めて自分で出すときは、消防署のページか窓口で受け付け方を確かめてから出すほうが確実です。

今日からできること

  1. 院内の消防用設備を書き出す。消火器の本数と製造年、誘導灯・誘導標識、火災の感知器、非常ベルなど。
  2. テナントなら、ビルの管理会社に2つ聞く。医院の区画の中まで点検しているか。消防署への報告は、誰の名前で、いつ出しているか。
  3. 前回の報告書の控えを探す。施行規則は、点検の結果を維持台帳に記録するよう求めています。まずその綴りを探します。
  4. 自分で点検してよい建物かを見る。延べ面積と、直通する階段の数。迷ったら消防署に聞きます。
  5. 次の点検の月を決める。機器点検は6月ごと、報告は1年に1回です。

それでも残る面倒

半年に1回と1年に1回の仕事は、担当が替わると途切れるおそれがあります。前回どの業者に頼んだか、控えをどこに置いたかは、前の担当の記憶の中にしか無いことがあるからです(年1回の仕事が引き継がれない話は辞めたスタッフの仕事が引き継がれない医院の共通点に書きました)。自ら点検できる医院なら、点検そのものは院長でなくても回せます。誰に渡すかの考え方は院長がやらなくていい仕事の見分け方にまとめています。

なお、この記事は消防用設備等の点検と報告だけを扱いました。防火管理者の選任や、消防法第8条の2の2の防火対象物点検は、別の制度です。この記事では扱っていません。

まとめ

  • 消防用設備等を定期に点検し、結果を消防長又は消防署長に報告するのは、所有者・管理者・占有者の義務(消防法第17条の3の3・第2条第4項)
  • 入院の施設を持たない診療所は施行令別表第一(6)項イ(4)。報告は1年に1回(施行規則第31条の6第3項)。診療所が入る複合用途のビル((16)項イ)も1年に1回
  • 機器点検は6月ごと、総合点検は1年ごと。どれが要るかは設備の種類で決まる(平成16年消防庁告示第9号)
  • 延べ面積が千平方メートル以上のもの、避難階以外の階にあって直通階段が2つ以上ないもの(屋外階段などの例外あり)などは、消防設備士等に点検させる(施行令第36条第2項)
  • それ以外は自ら点検できる。消防庁のパンフレットとアプリが使える。迷ったら消防署に確かめる

当たった条文と消防庁の資料

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事務長AIの「期限」(開いた先の見出しは「これから来るもの」)に、点検と報告の時期を「何の期限か」「期限の日」「担当」と一緒に登録できます。「繰り返し(任意)」に半年や1年ごとと入れておくと、済ませたときに次の期限が立つので、毎回入れ直さずに済みます。出した報告書の控えは「証跡を足す(写真かPDF・10MBまで)」で残せます。点検そのものや、報告書を作る機能はありません。

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この記事を書いた人

近藤 宏海
近藤 宏海 株式会社ガラパゴスワークス 代表取締役

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私は歯科医院の事務の現場で、医院の開業から日々の運営まで、発注・納品・人の手続き・お金の管理を担ってきました。いまは歯科医院の開業コンサル・経営コンサルとして、ほかの医院の立ち上げや立て直しにも関わっています。

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