歯科診療所の変更届は10日以内、何を出すか

歯科診療所の変更届は10日以内、何を出すか

勤務の歯科医師が入った。院内を改装して、診療室の配置が変わった。医院の名前を変えた。どれも医院にとっては大きな出来事ですが、そのとき保健所に何か出したかどうか、すぐに答えられますか。

先に結論です。歯科医師が個人で開設した診療所は、開設のときに届け出た事項に変更が生じたら、10日以内に都道府県知事(保健所を設置する市・特別区では市長・区長)に届け出ます(医療法施行令第4条第3項)。届け出た事項には、診療に従事する歯科医師の氏名や、建物の平面図、従業者の定員まで入っています。この記事では、個人立の歯科診療所を中心に、どんな変更が届出の対象になるのか、自治体の案内はどう書いているのかを確かめます。医療法人が開設している診療所は、許可の手続きが入るので、仕組みが違います(最後に少しだけ触れます)。

目次

開設届と変更届 ── 医療法第8条と施行令第4条

医療法第8条第1項によると、臨床研修等修了歯科医師が診療所を開いた場合、開設してから10日以内に届出が要ります。出す先は、診療所がある場所の都道府県知事です。個人で開業した院長が、開業のときに出したのがこの開設届です。

医療法施行令第4条第3項は、そのあとの決まりです。臨床研修等修了歯科医師が開設した診療所で、法第8条第1項により届け出た事項が変わったら、10日以内に届出をしなければなりません。出す先は、開設届と同じく、診療所がある場所の都道府県知事です。同じ条の第1項の括弧書きによると、保健所を設置する市や特別区の区域にある診療所では、届け出る先は市長や区長になります。

届け出た事項とは何か ── 施行規則第4条

開設届に書く事項は、医療法施行規則第4条が決めています。第4条は、ほかの条の号を引く形で書かれているので、引いている先を開いて並べると、個人立の歯科診療所に関係するものは次のとおりです(病床や外来医師過多区域など、無床の歯科診療所に関わりの薄い号は省きました)。

届け出た事項規則の場所
勤務の歯科医師がオンライン診療をする場合は、そのこと第3条第1項第5号
勤める薬剤師がいれば、その人の氏名同第4号
診療に従事する歯科医師の氏名/担当診療科名/診療日及び診療時間同第3号
管理者の住所と氏名/開設の年月日同第2号・第1号
技工室を置くなら、歯科技工室の構造設備の概要第1条の14第1項第13号
建物の構造概要と平面図(部屋ごとの用途を示す)同第11号
敷地の面積と平面図同第9号
従業者(医師・歯科医師・薬剤師・看護師その他)の定員同第8号
2つ以上の病院・診療所を同時に開設するなら、そのこと同第7号
ほかの病院・診療所を開設・管理している、又はそこに勤務しているなら、そのこと同第6号
名称/開設の場所/診療を行おうとする科目同第2号〜第4号
開設者の住所と氏名第4条第1号

ここからは筆者の読み方です。表を見ると、「開業のときだけ書いたもの」と思いがちな事項が並んでいます。勤務医の入退職は、診療に従事する歯科医師の氏名の変更です。改装で診療室と技工室の配置を変えれば、建物の平面図や技工室の構造設備が変わります。歯科衛生士を増やして従業者の定員が変われば、それも届け出た事項の変更です。

自治体の案内は、ここで分かれる

実際にどの様式で何を付けて出すかは、保健所ごとの案内に書いてあります。ここでは東京都の2か所を読みました。

東京都多摩府中保健所は、個人開設の診療所・歯科診療所が、変更したあと10日以内に届け出る主な事項を、表にまとめています。開設者の住所・氏名、名称、診療科目、敷地と建物の平面図、歯科技工室の構造設備、管理者の住所・氏名、診療に従事する歯科医師の氏名・担当診療科目・診療日と時間、従業者と従業者数、オンライン診療などです。新しく勤める人の国家資格の免許証の写しを付けること、事務員など免許のない職種は届出を省略できることも書いてあります。構造設備や部屋の用途といった構造概要を変えるときは、前もって相談するよう求めています。

同じページの注意事項には、次の3つがあります。

  • 開設者(管理者)の変更と、施設の移転は、廃止と新規開設の手続きが必要
  • 住居表示の変更などで所在地や住所が変わった場合も、変更の届出を求めている
  • 診療日時を変えたときは、保健所に届け出る義務はない、としている。届け出るなら第10号様式で

一方、世田谷区(世田谷保健所)のページは、診療所の名称・診療科目・診療日時をひとまとめにして、変更後10日以内の変更届(第11号様式)を案内しています。管理者の変更については、個人開設なら、いったん廃止して新しく開設する手続きになる、としています。

ここからは筆者の読み方です。施行規則は「診療に従事する歯科医師の診療日及び診療時間」を届け出る事項に入れていますが、医院の診療日時を変えたときの扱いは、多摩府中保健所(東京都)と世田谷区で案内が違います。様式の番号も、自治体ごとに違います。自院の所在地の保健所のページで確かめるのが確実です。

休止・再開・廃止も10日以内

医療法第8条の2第2項によると、診療所の開設者は、診療所を休止したときは、10日以内に都道府県知事(保健所を設置する市・特別区では市長・区長)に届け出なければなりません。休止した診療所を再開したときも、同じです。第9条第1項によると、廃止したときも10日以内です。第9条第2項によると、開設者が亡くなったとき、又は失踪の宣告を受けたときは、戸籍法で死亡や失踪を届け出る義務を負う人が、10日以内に届け出ます。

医療法第89条第1号は、第8条・第8条の2第2項・第9条などの規定に違反したときに、違反行為をした者を20万円以下の罰金に処する、としています。

ここからは筆者の読み方です。第89条第1号が挙げているのは医療法の条で、変更届を定めている施行令第4条第3項はそこに入っていません。ただ、罰則が見当たらないことは、出さなくてよいことを意味しません。施行令第4条第3項は「届け出なければならない」と書いています。

今日からできること

  1. 開設届の控えを探す。何を届け出たかが、変更の基準になります。見つからなければ、保健所に写しの見方を聞きます。
  2. 開業のあとに変わったことを書き出す。勤務医・歯科衛生士の入退職、改装、名称、診療科目、住居表示の変更。上の表と照らします。
  3. 自院の保健所のページで、様式と添付書類を確かめる。診療日時の扱いのように、自治体で案内が違うものがあります。
  4. 厚生局への届出も一緒に見る。保険医療機関の指定は、保健所とは別に厚生局の管轄です。保険医の異動などは、厚生局にも届け出ます。施設基準の届出は施設基準の届出は出したのに、算定していない項目に書きました。

それでも残る面倒 ── 医療法人と分院

医療法人が開設している診療所は、上の施行令第4条第3項ではなく、別の決まりに乗ります。開設には医療法第7条の許可が要り、同条第2項によると、法人などが開設した診療所では、病床数や、厚生労働省令で定める事項を変えようとするときにも、許可が要ります(厚生労働省令で定める場合を除きます)。施行規則第1条の14第3項は、許可を受けなければならない事項として、開設の目的及び維持の方法、従業者の定員、敷地の平面図、建物の構造概要と平面図、歯科技工室の構造設備などの号を挙げています。世田谷区のページも、法人開設の診療所の構造の変更は、変更後ではなく事前の手続きとして案内しています。

一方で、医療法人の診療所にも、変更後10日以内の届出はあります。施行令第4条第1項は、法人など臨床研修等修了歯科医師でない者が開設した診療所について、開設者の住所又は氏名、その他厚生労働省令で定める事項が変わったら、10日以内に届け出るよう求めています。施行規則第1条の14第4項は、その事項として、名称や診療を行おうとする科目、法人の定款などの号を挙げています。世田谷区のページも、法人開設の診療所の名称・診療科目・診療日時や、管理者以外の医療従事者(従事者数)の変更を、変更後10日以内の届出として案内しています。

ここからは筆者の読み方です。個人立なら「変えたあと10日以内」、医療法人なら「変える前に許可」が入る事項がある、という違いです。法人化や分院の開設を考えている院長は、事務の形を整えるときにこの違いも入れておくと、あとで手戻りが減ります(分院を出す前に、整えておきたい事務の形)。

まとめ

  • 臨床研修等修了歯科医師が開設した診療所は、開設届で届け出た事項に変更を生じたら、10日以内に届け出る(医療法施行令第4条第3項)
  • 届け出た事項には、診療に従事する歯科医師の氏名・担当診療科名・診療日及び診療時間、従業者の定員、建物の平面図、歯科技工室の構造設備などが入っている(医療法施行規則第4条)
  • 休止・再開・廃止も10日以内(医療法第8条の2第2項・第9条)
  • 管理者の変更や移転は、廃止と新規開設の手続きになると案内する保健所がある。診療日時の変更の扱いは、自治体で案内が違う
  • 医療法人の診療所は、許可の手続きが入る事項がある

当たった条文と保健所の案内

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この記事を書いた人

近藤 宏海
近藤 宏海 株式会社ガラパゴスワークス 代表取締役

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私は歯科医院の事務の現場で、医院の開業から日々の運営まで、発注・納品・人の手続き・お金の管理を担ってきました。いまは歯科医院の開業コンサル・経営コンサルとして、ほかの医院の立ち上げや立て直しにも関わっています。

現場で「これがあれば」と感じたものを、自分の手で形にしたのが「事務長AI」です。いまも導入先の医院で使っていただきながら、改良を続けています。

記事では、現場で実際にぶつかった困りごとを、公的な資料で裏付けながら、明日から使える形でお伝えします。

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