歯科医院の日報、何を書かせると意味があるか

歯科医院の日報、何を書かせると意味があるか

日報を始めたけれど、いつのまにか止まった。原因はスタッフのやる気ではありません。書かせている項目が、翌日の判断を1つも変えていないからです。読んでも何もしないものを書き続けられる人はいません。この記事では、何を書かせると意味があるのか、逆に何をやめるべきかを具体的に挙げます。

目次

続かない日報に共通する3つ

1. 感想を書かせている

「今日の反省」「明日の目標」。この欄があると、日報は作文になります。書く側は何を書けば正解か分からないので、当たりさわりのない言葉を選びます。「もっと声かけを頑張ります」が並び始めたら、その日報はもう情報を運んでいません。

2. 項目が多い

最初にきちんと設計した日報ほど、項目が10も15もあります。診療が終わって片付けをしている人に、15項目は書けません。書けないと、空欄のまま出すか、出さなくなります。

3. 誰も返事をしない

これが一番大きい。書いたものに何の反応もない状態が2週間続くと、人は「読まれていない」と判断します。実際には院長は読んでいます。読んでいることが相手に見えていないだけです。日報が止まる原因は、書く側ではなく読む側にあることがあります。

判断が変わる項目だけ残す

日報に残す基準は1つだけです。「これを読んだら、明日 何かを変えるか?」変えないなら書かせません。

書かせるその情報で何をするか
キャンセル・無断キャンセルの数と、分かる範囲の理由枠の埋め方、リコールの出し方を変える
切れた・切れそうな材料明日の発注に載せる
患者さんからの苦情・ヒヤリとしたことその日のうちに手を打つ。放置すると口コミに出る
明日までに院長に決めてほしいこと決める。日報の中で唯一、返事が要る欄
機械・設備の不調修理を呼ぶ。止まってからでは遅い

逆に、やめてよい項目です。

  • 今日の売上。レセコンに入っています。書き写す作業は二重入力です
  • 来院人数。同上
  • 反省と目標。面談でやることであって、毎日書くものではありません
  • 処置の内容。カルテにあります

数字を日報に書かせるのは、やめたほうがいいです。すでにどこかにある数字を人が書き写すと、間違いが増えるうえに、元のデータと食い違ったときにどちらが正しいか分からなくなります。

「1日3行」で足りる

続く日報は、この3行だけ

1
今日やったこと

1行。
詳しく書かせない

2
困ったこと

1行。
無い日は「なし」でよい

3
申し送り

1行。
次の人が困らないように

🔴 項目を増やすほど書かれなくなります。読む側が1行 返せる量に留めるのが続けるコツです。

上の表を全部埋める必要はありません。実際に運用するなら、この形が現実的です。

  • 1行目:今日 困ったこと(無ければ「なし」)
  • 2行目:足りないもの・切れそうなもの
  • 3行目:院長に決めてほしいこと

3行なら1分で書けます。1分なら続きます。「なし」と書ける形にしておくのが大事です。書くことがない日に空欄で出すと、出し忘れと区別がつきません。

読む側の仕事は、1行返すこと

日報を続けたいなら、院長がやることは1つです。翌日までに、1行返す。

  • 「発注しておきました」
  • 「それは私が電話します」
  • 「読みました。来週の朝礼で相談しましょう」

解決しなくて構いません。読んだことが伝わればいい。
ここから先は出典のある話ではなく、私が医院で見てきた範囲での見立てです。1行 返している医院の日報は続いていましたし、返していない医院の日報は止まっていきました。公的な統計があるわけではありません。

ついでに書いておくと、日報でスタッフを注意してはいけません。1回やると、翌日から「困ったこと」の欄に「なし」しか並ばなくなります。日報は事実を集める道具で、指導の道具ではありません。ここを混ぜると機能が死にます。

日報は、人の時間を使っている

最後に、コストの話をします。厚生労働省の「医療経済実態調査(医療機関等調査)」のページによると、この調査は2年に1回 実施され、歯科診療所も対象に含まれています。その第25回によると、医療法人立の歯科診療所では、医業・介護収益に占める給与費の割合が49.1%(令和6年度)です。

出典:厚生労働省・中央社会保険医療協議会「第25回医療経済実態調査の概要(令和7年11月26日版)」/歯科診療所(医療法人)の各収益・費用項目の構成比率

収入のおよそ半分が人の時間に使われている、ということです。日報は、その時間を毎日 少しずつ使う仕組みです。たとえば、15項目の日報をスタッフ5人が10分かけて書けば、1日に50分が消える計算です。人数も項目数も医院によって違いますから、自院の数字に置きかえてみてください。

それでも残る面倒

  • 紙の日報はその日は読めるが、先月・先々月のぶんを見返せない。「先月もこの機械 止まっていたよね」が言えない
  • グループLINEだと流れて消える。既読はつくが、対応したかは残らない
  • 「決めてほしいこと」が、決まったのかどうか後から追えない
  • 分院があると、院長が2か所ぶんを毎日 開きに行くことになる

まとめ

  • 日報が続かないのは、書く側ではなく設計と読む側の問題
  • 残す基準は「読んだら明日 何かを変えるか」。変えない項目は消す
  • 売上や来院数は書かせない。すでにレセコンにある
  • 1日3行(困ったこと・足りないもの・決めてほしいこと)で足りる
  • 院長は翌日までに1行 返す。解決しなくていい
  • 日報で注意しない。事実が集まらなくなる

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事務長AIなら、ここが変わります

日報は流れずに残り、後から月単位で読み返せます。困ったこと・問題点が日をまたいで並ぶので、同じことで毎日つまずいているのが見えます。インシデントや患者様トラブルは、そのまま医療安全・クレームの台帳へ渡ります。分院がある法人では、医院ごとの日報を1か所で読めます。なお、事務長AIはレセコンとは直結していません。数字はCSVで取り込む形です。

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この記事を書いた人

近藤 宏海
近藤 宏海 株式会社ガラパゴスワークス 代表取締役

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私は歯科医院の事務の現場で、医院の開業から日々の運営まで、発注・納品・人の手続き・お金の管理を担ってきました。いまは歯科医院の開業コンサル・経営コンサルとして、ほかの医院の立ち上げや立て直しにも関わっています。

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