歯科医院の年末調整、令和8年12月に基礎控除が上がる

歯科医院の年末調整、令和8年12月に基礎控除が上がる

10月に入ると、年末調整の用紙が出回り始めます。去年と同じ顔をした書類ですが、令和8年分は中身の計算が変わります。

先に結論を3つ書きます。①令和8年度の税制改正のうち、年末調整に効く3つは令和8年12月1日に施行され、使う先は令和8年分以後の所得税です。毎月の給与に使う税額表の切替えは、令和9年1月1日から。②11月までの毎月の給与から引く額は、これまでのままで変わりません。③変わるのは、12月にやる年末調整の計算と、スタッフの家族が「扶養」に入るかどうかの線です。

③は、パートの衛生士や学生の歯科助手を抱えている医院に直に効きます。国税庁の資料に当たって、順番に並べました。給与そのものの渡し方は歯科医院の給与明細の電子化 ── スタッフの承諾からで扱っています。

目次

何が、いつから変わるのか

国税庁のパンフレット「年末調整のしかた」(令和8年分)は、令和8年度の税制改正で3つ引き上げがあったと書いています(国税庁 年末調整のしかた(令和8年分))。

  • 基礎控除の引上げ(所得税法第86条の額が62万円。改正前は58万円)
  • 給与のほうの控除(給与所得控除)にある最低保障額。65万円が74万円になりました
  • 扶養親族等の所得要件の見直し

この3つは、令和8年12月1日から効きます。使う先は、令和8年分以後の所得税です。いっぽう、毎月の給与から引く額のもとになる「源泉徴収税額表」のほうは令和9年1月1日から効き、その日以後に支払う給与に使います。

つまり、同じ年の中で時期が分かれます。

時期医院がすること
令和8年11月まで毎月の給与から引く額は、今までの税額表のまま。変わりません
令和8年12月引上げ後の基礎控除額と、改正後の「給与所得控除後の給与等の金額の表」で1年分を出し、今まで引いてきた額と精算します
令和9年1月1日以後令和9年分の源泉徴収税額表に切り替えます

11月までは何も変えない、というのがこの改正の形です。年の途中で引く額を直すのではなく、12月にまとめて精算します。

今年の年末調整には効かないもの

ひとり親控除は38万円になりました(改正前は35万円)。ただし効くのは令和9年分以後の所得税で、令和8年分の年末調整には関わりません(国税庁 基礎控除の引上げ等に関するQ&A(令和8年度の税制改正))。源泉徴収票の様式も、この改正に伴う変更はありません。

「扶養の線」が動く ── パートと学生アルバイト

基礎控除が上がったことに合わせて、扶養控除などの対象になる人の所得要件も改正されました。医院から見ていちばん手触りがあるのは、給与だけで働いている人の収入金額のほうです(国税庁 年末調整のしかた(令和8年分)4ページ)。

医院に関わりの深いものから見ていきます。かっこの中は、収入が給与だけのときの金額です。

  • 学生アルバイト(勤労学生)。本人の合計所得金額の上限が、85万円から89万円になりました。給与だけなら150万円が163万円です。
  • 誰かの扶養親族や同一生計配偶者でいられる線。58万円以下だったものが62万円以下です。給与だけなら123万円以下が136万円以下になります。ひとり親が生計を一にする子も同じ金額ですが、こちらは合計所得金額ではなく総所得金額等の合計額で見る、と注記が付いています。
  • 配偶者特別控除の対象になる配偶者。58万円を超えて133万円以下だったものが、62万円を超えて133万円以下になりました。給与だけなら、136万円を超えて207万円以下。改正前は、下が123万円超で、上は207万円より低い額でした(1円単位まで決まった端数のある額です)。
  • 特定親族。58万円を超えて123万円以下だったものが、62万円を超えて123万円以下になりました。給与だけなら、123万円を超えて188万円以下だったところが、136万円を超えて197万円以下です。

合計所得金額で見ると、動いたのは下の線だけです。配偶者特別控除の133万円も、特定親族の123万円も、上限は据え置きになっています。ただし、給与だけで働いている人の収入金額に直すと、上限のほうも動きます。給与所得控除の最低保障額が上がったぶん、同じ合計所得金額に対応する収入額が増えるためです。特定親族なら、188万円だった上限が197万円です。配偶者特別控除の側も、同じように上がっています。ここを「上限は変わっていない」と読むと、対象になる人を対象外と判断してしまいます。

ここで一つ、はっきりさせておきたいことがあります。これは所得税の線であって、社会保険に入るかどうかの線とは別の話です。同じ「扶養」という言葉を使うので混ざりますが、根拠になる法律が違います。社会保険の側は歯科医院の社会保険、加入義務は個人立の常時5人からにまとめてあります。スタッフから「いくらまで働けますか」と聞かれたときは、どちらの話をしているのかを先に確かめてください。

生命保険料控除に、23歳未満の子がいる場合の特例

23歳に満たない扶養親族がいる人には、令和8年分と9年分について、一般の生命保険料控除の計算に特例が置かれました。旧生命保険料とあわせたときの限度額は6万円です(改正前は4万円)。なお、一般・介護医療・個人年金を合わせた上限は12万円のままで、ここは動いていません。子育て中のスタッフがいる医院では、ここで還付額が変わることがあります。

医院がやること ── 書類の順番

国税庁のQ&Aが、書類まわりの扱いを具体的に書いています。院長がやる順に並べ直すと、こうなります。

  1. 11月までの毎月の給与は、今までどおり。税額表を引くときに数える「扶養親族等の数」へ、この改正ではじめて対象になった家族を入れないように、とQ&Aが念を押しています。
  2. 改正で新しく扶養控除等の対象になる家族がいるスタッフには、扶養控除等申告書を出してもらう。申告書のうち、「異動月日及び事由」の欄です。そこへ「令和8年12月1日 改正」と書き添える例が示されています。申告書そのものの記載事項は、去年から変わっていません。
  3. 基礎控除申告書には、改正後の基礎控除額を書いてもらう。いくらになるかは、その人の合計所得金額で決まります。
  4. 配偶者控除等申告書と特定親族特別控除申告書は、改正後の給与所得控除額を当てて出した合計所得金額をもとに書いてもらう。最低保障額が上がったぶん、同じ収入でも合計所得金額が変わります。
  5. 12月の年末調整で精算する。引上げ後の基礎控除額と改正後の表で1年分を計算し、それまで引いてきた額との差を出します。

「12月1日にならないと書類を配れないのか」にも、Q&Aは答えています。その日を待っていては年末調整に間に合わないことも考えられる、という理由で、改正を織り込んだ書類を12月1日より前に出してもらっても差し支えないとしています。10月や11月に配っている医院は、そのままで構いません。

ただし、手元にある令和8年分の用紙は、裏面の注意書きが改正前のままになっていることがある、と注記が付いています。配る前に、国税庁のサイトで新しいものが出ていないかを一度 見ておくと安全です。

対象になる人、ならない人

年末調整は、扶養控除等申告書を出した人の全員が対象、というのが原則です。そのうえで、外れる人が国税庁の資料の5ページに挙げられています。医院に当てはまりそうなものを拾うと、次のようになります。

  • その年の主たる給与の収入が2,000万円を超えている人
  • 2か所以上から給与を受けている人のうち、別の勤め先のほうへ扶養控除等申告書を出している人や、年末調整をする時までに申告書を出していない人(税額表の乙欄を使う人)
  • 災害で被害を受け、災害減免法によって本年分の給与に対する徴収猶予や還付を受けた人

歯科医院で気をつけたいのは2つめです。週に2日だけ来てもらっている衛生士が、別の医院を主たる勤め先にしていることがあります。申告書がどちらに出ているかで扱いが変わるので、書類を配る前に本人へ確かめてください。

もう1つ、年の途中で辞めた人の扱いも決まっています。年末調整をするのは、次のどれかに当たる場合です。亡くなって辞めたとき。心身の障害が重く、辞めた時期から見て年内の再就職が見込めないとき。12月に支給期が来る給与を受け取ってから辞めたとき。そしてパートなどで辞めた人のうち、その年に受け取る給与の合計が136万円以下のとき(辞めたあと年内に別の勤め先から給与を受けると見込まれる人は外れます)。この136万円は、上で見た扶養の線と同じ数字です。ここに当たらない人は、その医院では年末調整をしません。

もう一つ、時期の話があります。改正後の控除等が使えるのは、令和8年12月1日以後に行うぶんの年末調整です。年の途中で亡くなって退職した人や、海外へ移って非居住者になった人のように、居住者のまま最後の給与を受け取ったのが11月30日までだった場合、その年末調整には改正後の扱いが及びません。本人が改正後の控除を受けるには確定申告等が要る、とQ&Aは書いています。

納める日と、源泉徴収票のゆくえ

12月の年末調整で精算した分を納める日は、令和9年の1月12日・火曜日です。「納期の特例」の承認がある医院なら1月20日・水曜日になります(国税庁 年末調整のしかた(令和8年分)表紙・2ページ)。

ふだんの期限も、このページに並んでいます。特例の承認がなければ、払った月の翌月10日。特例があれば、1月から6月までの分を7月10日、7月から12月までの分を翌年の1月20日にまとめます。期限が土日や祝日に重なったときは、休み明けの日へずれます。納める税額が0円のときも、本税欄を0と書いた所得税徴収高計算書を所轄の税務署へ出す扱いです。

源泉徴収票まわりは、Q&AのQ3-3に2つ書かれています。1つは、国税のシステムが更改されるのに伴い、令和8年8月以降、源泉徴収票を含む「全ての」法定調書で様式が変わること。もう1つは、令和9年1月以後に出す令和8年分のものについて、市区町村へ給与支払報告書を出していれば、税務署へは出さなくてよいということです。スタッフ本人への交付は、これまでどおり要ります。

スタッフに返す額が出たときの順番も決まっています。まず、年末調整をした月の納付分から差し引いて本人へ返す。それで足りなければ、次の月から順に差し引いていく。返し始めた日の翌月から2か月たっても返しきれない見込みなら、所定の請求書を所轄税務署へ出して還付を受けられます。

10月のうちに、決めておけること

制度の中身は12月まで動きませんが、段取りは今月のうちに決められます。

  • 配る日と回収の締切を先に決める。12月の給与計算に間に合う日から逆算します。
  • 扶養の線が動くことを、スタッフに一度 伝えておく。「去年と同じつもりで書いたら違っていた」を防げます。伝えるのは所得税の話だと断ったうえで。
  • 受け取った申告書の置き場所を決める。受理した扶養控除等申告書は、税務署長から求められるまでの間、給与を払う側が持っておく扱いです。有給の管理簿と同じで、置き場所を決めていないと出てきません(歯科医院の有給管理、法定どおりにできていますか)。
  • マイナンバーが書かれた申告書を受け取るときは、本人確認(番号確認と身元確認)が要る。誰がどこでやるかを決めておきます。

国税庁は、令和8年分の各種情報を10月頃に、年末調整の解説ページへ載せる予定だと書いています。記載例やスタッフ向けのリーフレットも、そこに並びます。配る前に一度 のぞいておくと、手戻りが減ります。

まとめ

  • 基礎控除の引上げなど令和8年度の改正は、令和8年12月1日の施行。使う先は令和8年分以後の所得税で、12月の年末調整から効きます。
  • 令和8年11月までの毎月の源泉徴収事務に変更はありません。源泉徴収税額表の切替えは令和9年1月1日以後の給与から。
  • 給与所得控除の最低保障額は65万円から74万円へ。扶養親族・同一生計配偶者の所得要件は58万円以下から62万円以下(給与だけなら123万円以下から136万円以下)へ。勤労学生は85万円以下から89万円以下(給与だけなら150万円以下から163万円以下)へ。
  • 新しく扶養控除等の対象になる家族がいるスタッフには、扶養控除等申告書を出してもらいます。申告書の「異動月日及び事由」の欄に、その理由を書き添えてもらいます。
  • 改正を反映した書類は、12月1日より前から提出してもらって差し支えないとされています。
  • 納める日は令和9年の1月12日・火曜日。「納期の特例」の承認がある医院は1月20日・水曜日。

今年の年末調整は、書類の書き方ではなく、線の位置が動いた年です。10月のうちにスタッフへ一声かけておくと、12月の問い合わせが減ります。

当たった資料

事務長AIなら、ここが変わります

事務長AIには、これから来る締切を並べる「期限」(開くと「これから来るもの」)と、誰にいつまでを頼むかを残す「タスク」があります。書類を配る日、回収の締切、納付の期限を、そこへ置けます。スタッフの一覧は「従業員名簿」(開くと「人」)、給与にまつわる数字は経理の「人件費」です。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

歯科医院 × AI

この記事の作業、
事務長AIなら画面の順番どおりに進むだけです。

発注・お金・人・シフト・集患。紙とファックスの仕事を、ひとつの画面に。
やることが画面に並び、誰が何をしたかが残ります。院長は承認だけです。

1医院あたり 月額

29,800円 (税抜)

先着10医院様は、初期費用300,000円が無料

30分、画面を見てみる

フォームは1分で終わります。しつこい営業はしません。できないことも、その場で正直にお伝えします。

この記事を書いた人

近藤 宏海
近藤 宏海 株式会社ガラパゴスワークス 代表取締役

院長、その事務、ひとりで抱えていませんか。

私は歯科医院の事務の現場で、医院の開業から日々の運営まで、発注・納品・人の手続き・お金の管理を担ってきました。いまは歯科医院の開業コンサル・経営コンサルとして、ほかの医院の立ち上げや立て直しにも関わっています。

現場で「これがあれば」と感じたものを、自分の手で形にしたのが「事務長AI」です。いまも導入先の医院で使っていただきながら、改良を続けています。

記事では、現場で実際にぶつかった困りごとを、公的な資料で裏付けながら、明日から使える形でお伝えします。

代表あいさつを読む

目次